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『んー、...でも、なんか喋ってたい気分、ていうか。私声へん?』
「別に」
短くそう言った恵にジトリと目線を向けると、観念したように軽く息を吐いた。
「...悪ぃ、嘘。完全鼻声。まぁ、典型的な風邪だな」
『分かってるんだからそんな嘘つかなくていいのに。...声変って言ったら怒るって思ったの?』
「そうじゃねーよ、普通に言われたくないと思っただけだ」
『そっか、そっか、優しいねぇ...恵くんは』
「なんだよそれ」
語尾を伸ばしたのが気になったのか、単純に恵くん呼びが気になったのか、ふはっ、と恵が軽く笑った。
さっきから軽口は叩いていたけど表情はずっと落ち着かないような、心配しているような顔だったから、笑い声になぜかこっちが安心してつられて笑う。
でも、笑い声は喉で突っかかって上手く出てこなくて、代わりにゴホゴホと酷い咳になってしまった。
少し笑ってくれた恵の笑顔が引っ込んで、その咳のせいでまた険しく歪む。
ああ、最悪。
『...あ"ー、さいあく、喉ガラガラでさいあく...こんな可愛くない声やだ、』
「──...けど、」
『なあに、?ごめん、聞こえなかった』
「...別に、可愛いけど」
『え"、』
「...なんだよ」
『恵...嘘つきは死刑だよ』
「重過ぎだろ」
だって、このガラガラ声が可愛いなんて、嘘じゃないなら彼は相当ズレている。
東堂から女の子のタイプを聞かれた時はあんなベストアンサーを繰り出したのに、どうしてしまったのか。
「嘘じゃねーよ。でもまぁ...喉痛いのは嫌だろ、早く治そうな」
『...め"く"み"ぃぃ、』
「鼻水垂れてんぞ」
早く治そうな、なんて。そんな優しい顔で言われたら頷くしかないじゃないか。
熱のせいで弱った涙腺が何故か緩んだ。
多分、鼻水も緩んだ。
『.....ちゅき』
「ふっ、ばか」
思いを込めた愛の言葉は、ふっ、となんとも軽々しく鼻で笑われた上に、馬鹿というハッピーセット付きで返ってきた。
とてもばかなんて暴言を吐く顔じゃない。それはそれは愛情の籠った表情だったなんて、恥ずかしくてすぐ目を逸らしてしまったからよく分からなかった。
「なんか飲むか。喉が痛むのは喉粘膜の乾燥だからな、常に潤した方がいいだろ」
何がいい?なんて聞きながら、恵は何本かペットボトルを取り出した。
『...。恵、あのね...う"ぅ、』
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Uo(プロフ) - 若葉さん» コメントありがとうございます❕今とまのアカウントの端末が動かないので、違う端末で返信させて頂きます。温かいコメント、本当にありがとうございます!不定期な更新ですが、お付き合い頂けると嬉しいです! (2022年9月4日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - も、とっても最高です!がっつり甘めって感じではなくて、ちょうどいい感じの好かれ具合なのでとってもいいです。更新楽しみに待っています! (2022年8月27日 21時) (レス) @page41 id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - わか丸さん» コメントありがとうございます❕伏黒恵に好かれる女の子ってキャラ的に難しい…って思ってたので、そう言って頂けると嬉しいです!🤍 (2022年8月14日 15時) (レス) id: f3920fcf38 (このIDを非表示/違反報告)
わか丸 - 夢主とっても可愛いです!! (2022年8月14日 1時) (レス) @page33 id: 79fd85110e (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - てぃんさん» コメントありがとうございます❕嬉しいお言葉に感動しています…!楽しんで頂けるよう、頑張ります!! (2022年8月3日 20時) (レス) id: d352a8403d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年6月14日 18時