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保冷剤が耳から離れて、伏黒がピアッサーを手に取る。
...ついに、ついになのだ。
『恵、い、痛くしないでね、』
「.....言い方」
手をぎゅっと握りしめたAは、その目をじんわりと潤ませて、伏黒を見上げている。
その表情にドクンと心臓が跳ねる。
「(くそ、可愛いな...!!)」
『恵、私初めてなの、お願い、優しくして...』
「ッばっ、ヤメロ馬鹿!!!」
『馬鹿?!!突っ込むにしてももっとあったでしょ!!』
コイツの悪ふざけはいつも心臓に悪い。
ずっと一緒にいたら、軽く5年は寿命を縮めることになるだろう。
こんなの間違っても思春期真っ只中の男子高校生に吹っ掛ける悪ふざけではない。
もし、もしこのまま襲われたら、逃げられるとでも思っているのだろうか。ただでさえ体力も筋力も無いAにはさらさら無理な話だと言うのに、彼女はケラケラと笑っている。
「(こいつ、虎杖とか他の奴にもこんなこと言ってねぇだろうな...?)」
.....有り得なくない。むしろ、有り得る。
考えるほど頭痛がしてきて頭を抱えると、手に持っていたピアッサーが頭にあたる。
そうだ、ピアスホールを開けてやるんだった。そう思い出して、もう一度集中力を入れ直す。
『恵ぃ、なにか気が紛れることない...?』
「...円周率でも数えてろ」
プルプルと震えるA。
強気は強気。でも泣く時は泣く。そんな人だ。
祈るような姿勢であってもない円周率を唱えるAを後ろから見ていると、髪の隙間から覗いている耳が緊張のせいか赤い。
「(...かわい、)」
「大丈夫だA、痛くしねぇよ」
『...ねぇ、恵もわざと言ってるでしょ──』
振り向く前の一瞬、その少し赤みがかった彼女の耳に唇を寄せた。
チュ、という小さな音と、微かに伝わる熱。
『──へ、』
全神経を耳に一点集中させていたAは、その感触に驚いて一瞬ピタリと止まる。
バチン──!!
『──えっ!!?い"っ...たくない...!!えっ痛くない!』
「だから言ったろ」
『っていうかそれより、!!恵、今──』
「あとまだ左耳も残ってるな。...左右では痛みも違うらしい」
『...』
顔を赤くしていたAは、伏黒の言葉に今度はすぐに顔を青くした。
なんとも単純だ。そんなところすら、愛おしい。
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歌詞 - 特急が取り込んでいたのか (3月22日 17時) (レス) @page32 id: 2b3270be69 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます❕かわいい性格に書けていたならとても嬉しいです😖スタンドバイミー、いつ見ても名作ですよね…!! (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
るる - まって、、夢主かわいい💕 てか、スタンドバイミー最高ですよね!リバーフェニックス私も好きー!クリスは性格もイケメンだし、、、。 (5月5日 0時) (レス) @page3 id: 7b5dad0b18 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - †NANA†さん» 詳しく教えて下さり本当にありがとうございます…!!誤字が多くて申し訳ないです😞 (2022年8月14日 20時) (レス) id: f3920fcf38 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ32と33で、「特級」が「特急」になっています。 (2022年8月13日 16時) (レス) @page35 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま x他1人 | 作成日時:2022年5月17日 0時