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俺の性別も知らず、恵なんて名前を付けた父親は今も何処かでのうのうと生きている。
因果応報は全自動ではない。
悪人は、法の下で初めて裁かれる。
呪術師はそんな"報い"の歯車の一つだ。
少しでも多くの善人が平等を享受できるように──、
「(──俺は不平等に、人を助ける)」
「!!」
「いい...!!いいぞ、命を燃やすのはこれからだったわけだ」
「魅せてみろ!!!!伏黒恵!!!!」
「...布瑠部由良由良 八握──」
"『恵』"
両手を握って構えた。
頭に思い浮かべながら呟いた、あの化け物を呼び出す呪文。
その時聞こえた、こんな時まで凛と響く声。
"『恵、だめだよ』"
「...」
「.....俺は、」
「オマエを助けた理由に、論理的な思考を持ち合わせていない。危険だとしても、オマエのような善人が死ぬのを見たくなかった。それなりに迷いはしたが──結局は我儘な感情論...」
「...でも、それでいいんだ」
そうだ。それでいい。
俺は助ける人間を選ぶ。虎杖、オマエは──、
「俺は
「──だからオマエを助けたことを、一度だって後悔したことはない」
「...そっか」
オマエは、助けられるべき人間だった。
目の前には、同じ見た目でも宿儺とは比べ物にならない程柔らかく笑う虎杖の顔。
「伏黒は頭がいいからな、俺より色々考えてんだろ」
死に際とは思えない声色。それでも確かに虚になっていく瞳孔。
目を逸らすな、と自分に言い聞かせる。
虎杖の胸にポカンと開いた穴から溢れる血も、虚な目も、俺がした選択なのだから。
「オマエの真実は正しいと思う。でも俺が間違ってるとも思わん」
「...」
何でもないように気恥ずかしげに頭を搔く虎杖。
「あー、悪い、そろそろだわ」
ボタボタと溢れて止まることのない血。
「伏黒も、久我も釘崎も、五条先生...は心配いらねぇか、」
「──長生きしろよ」
優しく地面を打つ雨。ただ顔に降り注ぐ雨を受けながら、灰色に広がる空を仰いだ。
ドサッ、と人ひとり分の重さが足元に倒れた音と、
それがもうピクリとも動かないことに気づきながら、
それでも、見下ろすことはできなかった。
*
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歌詞 - 特急が取り込んでいたのか (3月22日 17時) (レス) @page32 id: 2b3270be69 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます❕かわいい性格に書けていたならとても嬉しいです😖スタンドバイミー、いつ見ても名作ですよね…!! (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
るる - まって、、夢主かわいい💕 てか、スタンドバイミー最高ですよね!リバーフェニックス私も好きー!クリスは性格もイケメンだし、、、。 (2023年5月5日 0時) (レス) @page3 id: 7b5dad0b18 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - †NANA†さん» 詳しく教えて下さり本当にありがとうございます…!!誤字が多くて申し訳ないです😞 (2022年8月14日 20時) (レス) id: f3920fcf38 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ32と33で、「特級」が「特急」になっています。 (2022年8月13日 16時) (レス) @page35 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま x他1人 | 作成日時:2022年5月17日 0時