・ ページ30
＊
中学に上がってから俺は誰が見たって不良で、アイツは誰にでも好かれるような奴だった。
悪人が嫌いで、善人は苦手だ。
だから悪人も善人も──自分の姉さえ突っぱねた。
そんな俺が、変わらずAと一緒にいられるわけもない。
Aの、あの凛と澄んだ瞳に映る俺が、酷く見えて仕方なかった。怖かったんだ。
理由はもうひとつ。
『恵は、呪霊がこわい？』
「…いや。あー、
──まぁ、そうかもな」
ただ出来心でそう言った。
「(…どんな反応するかな)」
『ええ!!こわいの？意外〜』とか、
『私は小さい頃から見てるからこわくないよ』とか。
まぁそんなもんだろ。
それでそんなようなことを言ったら、「冗談だよ」と言ってやろう。そう思っていた。
『そっかー、』
思いの外、Aの表情は固かった。
『──私もねー、ちょっと恐いんだ』
『ちょっとね、ほんとにちょっとだけだよ』なんて急いで付け足してるのも、ろくに聞いていなかった。
衝撃的だったのだ。
呪霊を恐がるタイプには見えなかった。いや、俺がAのことを勘違いしてしまっていただけなのだろうが。
どちらにせよ、「冗談だよ」と言える雰囲気ではなかった。
『でも、恵も呪術師にならなきゃいけないんでしょ？』
「…」
無言は肯定と取ったらしい。
『私も呪術師になりたい』
「…なんでだよ。恐いんだろ」
『恵が呪霊に恐がらなくていいように、私が守ってあげるの』
正直、呪術師なんて訳の分からないものになるのはあまり乗り気じゃなかった。
特に夢があった訳でも無いが、ただそこまで命を犯した危険な職種を望んでいるわけでもない。
でも術師として働かなければ生活できないし、何よりAが呪術師になるなら、俺もなるんだろうと思っていた。
中学に上がってからも、俺はやっぱりAが好きだった。
日に日に思いは大きくなって、彼女との何気ない、本当になんでもない会話が俺の中の容器を満たして広がる。
たったそれだけで幸せだった。
高望みをしたことは一度もない。
ただ幸せになってくれればいい。その横に俺がいなくても、その両目に映るのが俺じゃなくてもいい。
有名な呪術師の家系の一人娘だった上に、しっかりと術式を受け継いで生まれたAは当たり前のように呪術師になるように育てられていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 842人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
歌詞 - 特急が取り込んでいたのか (3月22日 17時) (
レス) @page32 id: 2b3270be69 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます❕かわいい性格に書けていたならとても嬉しいです😖スタンドバイミー、いつ見ても名作ですよね…!! (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
るる - まって、、夢主かわいい💕 てか、スタンドバイミー最高ですよね！リバーフェニックス私も好きー！クリスは性格もイケメンだし、、、。 (2023年5月5日 0時) (レス) @page3 id: 7b5dad0b18 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - †NANA†さん» 詳しく教えて下さり本当にありがとうございます…!!誤字が多くて申し訳ないです😞 (2022年8月14日 20時) (レス) id: f3920fcf38 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ32と33で、「特級」が「特急」になっています。 (2022年8月13日 16時) (レス) @page35 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とま x他1人 | 作成日時：2022年5月17日 0時
