遥かな瞳 ページ27
小学一年の時、
Aという子を頼む、と白髪の怪しい男に言われた。
禪院家とやらに行かなくてもいい代わりのもう一つの条件。
全く、それ以上でもそれ以下でもない。
そもそも今までまともに友達なんて出来たこともない俺にそんな頼みをするのは、人選ミスのような気もするが。
承諾したからには、俺にはこの約束を果たす責任がある。だから、町のはずれの山の中、森のずっと奥にあるという屋敷に向かった。
─遥かな瞳─
見渡す限り緑に囲まれた大きな日本家屋の中に一人、重苦しそうな着物に身を包んだ少女が外を眺めて座っていた。
珍しい。言ってしまえば、普通じゃない容姿。
俺には不相応なこんな条件を出したあの男にも似たその女からは、どことなく不思議な雰囲気が醸し出ていた。
頼む、と言われたってどうすればいいのか。考えながらゆっくりと門をくぐった俺に気づいて、外を見つめていた目がゆっくりとこっちを向いた。
『わたしと友達になってくれるってほんとう?』
くりんと大きな目に目一杯俺を映して、じっとこっちを見ながら、その声は透き通ってなんの障害もなくスっと耳まで届いていた。
『悟くんが言ってたの。わたしと友達になってくれるってほんとう?』
「…あぁ」
「本当だ」と言えば、Aはキュッと目尻を下げた。
『嬉しい!わたし、同い年の子に会うのは初めてだから緊張してたの』
「初めて?町には同じ歳の子供くらい沢山いるぞ」
『うん。でもここから出たことないから』
「……は?」
Aの透き通った声の後の俺の間抜けな声は、どこか一層間抜けに聞こえた。
Aに兄弟はいない。生まれた時からずっと、この家にひとりぼっちでいるのだ。
正確にはひとりぼっちじゃなくて何人か大人がいたが、通常の家庭のような、つまりまだ小さなAに寄り添ってくれるような大人ではなかった。
呪術師の家系は学校には通わせず、自分の家で呪術師を育てることも珍しくない。
だからAも、その広い家の中で呪術を学び、鍛え、家の中が全てだと思って生きていた。
『ねぇ、名前が知りたいな』
「…伏黒恵」
『恵──』
Aの唇は、俺の名前を一文字ずつ丁寧に、ゆっくりと紡いだ。
ドクン、となぜか心臓が鳴った。
『──ねぇ、恵。松籟って聞いたことある?』
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歌詞 - 特急が取り込んでいたのか (3月22日 17時) (レス) @page32 id: 2b3270be69 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます❕かわいい性格に書けていたならとても嬉しいです😖スタンドバイミー、いつ見ても名作ですよね…!! (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
るる - まって、、夢主かわいい💕 てか、スタンドバイミー最高ですよね!リバーフェニックス私も好きー!クリスは性格もイケメンだし、、、。 (2023年5月5日 0時) (レス) @page3 id: 7b5dad0b18 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - †NANA†さん» 詳しく教えて下さり本当にありがとうございます…!!誤字が多くて申し訳ないです😞 (2022年8月14日 20時) (レス) id: f3920fcf38 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ32と33で、「特級」が「特急」になっています。 (2022年8月13日 16時) (レス) @page35 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま x他1人 | 作成日時:2022年5月17日 0時