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ずっしりと重みのある光を放った二つの目が、じっと俺の目を見ていた。
「(死なせたくねぇんだよ…、頼むから、今は聞き分けてくれ、)」
そう思った俺の心を読んだかのように、Aの瞳が少し揺れた、気がした。
正確には、目を合わせられなかった。
いつもそうだ、
Aはいつも真剣に、相手の目を見つめてちゃんと伝えようとしているのに、俺はその目を見つめ返せない。
Aはこんなにも、まるで手を広げるように大切に受け止めようとしてくれているのに。
俺はいつも伝えたいことの半分も伝えられずに、結局黙って蓋をする。
「…冷てぇ、」
少し震えるAの頬に手の甲を滑らせるように触れると、ヒヤリ、ととても人肌とは思えない冷たさに思わず声を漏らした。
頑張ったんだな、あの被害者たちのために。
あの面会来ていた、母親のために。
「…では、釘崎さんと久我さんを送り届けたら私もなるべく早く戻ります」
「いや。もう伊地知さんは居てもあんまり意味無いので、戻ってくる時は1級以上の術師と一緒にお願いします。いないと思うけど」
グサッと傷つく伊地知さんは置いといて、後部座席で俯くAの方に視線を向ける。
「もう十分だ、A。こっちのことは俺に任せろ」
言いながら、俺はしっかりとAの目を見た。
綺麗だ。
色素が抜けたキラキラ光を反射させる瞳も、
その目を縁取るくりんと上を向いたまつ毛も、
凛としていて、透き通っていて──、
やっぱり綺麗だ。
「──大怪我が無くてもとにかく戻って治療を受けろよ。いいな?あー、でもまずあの人がシラフかどうか確認してからだな、この時間から飲んでねぇとは思うが…」
『…』
「…釘崎のことは頼む」
『…うん』
「……A、オマエが無事でよかった」
*
絵に描いたみたいに綺麗な形の唇から紡がれた私の名前。それから、
"「……A、オマエが無事でよかった」"
まるで私じゃない誰かは無事じゃないみたいな言い方。
野薔薇はここに居るから、今はもう疲れ切って寝ちゃってるけどこのまま家入さんに診せれば多分明日には大丈夫になってるはず。
じゃあ、大丈夫じゃないのは誰…?
伊地知さんの運転する車の後部座席に頭をもたれさせて、鉛のように重たい息を吐く。
『…恵』
無意識にそう呟いていた。
*
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歌詞 - 特急が取り込んでいたのか (3月22日 17時) (レス) @page32 id: 2b3270be69 (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - るるさん» コメントありがとうございます❕かわいい性格に書けていたならとても嬉しいです😖スタンドバイミー、いつ見ても名作ですよね…!! (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
るる - まって、、夢主かわいい💕 てか、スタンドバイミー最高ですよね!リバーフェニックス私も好きー!クリスは性格もイケメンだし、、、。 (2023年5月5日 0時) (レス) @page3 id: 7b5dad0b18 (このIDを非表示/違反報告)
とま(プロフ) - †NANA†さん» 詳しく教えて下さり本当にありがとうございます…!!誤字が多くて申し訳ないです😞 (2022年8月14日 20時) (レス) id: f3920fcf38 (このIDを非表示/違反報告)
†NANA†(プロフ) - ページ32と33で、「特級」が「特急」になっています。 (2022年8月13日 16時) (レス) @page35 id: 9dc612bbe9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま x他1人 | 作成日時:2022年5月17日 0時