41話 ページ43
「いよいよ飛行訓練です。さぁ、ボーッとしていないで!全員箒の左側に立ちなさい!」
飛行術の教官、フーチがきびきびと指示を出す。
「右手を箒の上に出して、"上がれ"!!」
『上がれ!──上がれ!!』
生徒の声があちこちで響く中、二度目の掛け声で、Aの箒はふわふわと上がって手におさまった。
『みてハリー!上がったわ!』
「見てたよ!すごいね!」
そう言うハリーの手にはもう箒が握られていて、多分一回で成功させたんだろう。
『ハリーあなた一回で上がったのね!すごい!』
一発で上がる人は少ないらしい。傍で青白い少年も一回で箒を上げたのを見て、Aが声をかけた。
『あなたも一回で上がったのね!』
「まあね。当然だよ。君も上がったみたいだけど」
『私は二回目だったの。私、A・シャフィック。よろしくね』
「シャフィック？純血の家系じゃないか」
Aの名前を聞いて、蒼白い少年は箒を握っていない方の手を差し出した。手まで血管が透き通って青白い。
「僕はドラコ・マルフォイ。グリフィンドールに入るなんて残念だったね。純血は皆スリザリンに入るべきだったのに。今からでもダンブルドアに頼まないか？」
「お生憎。間に合ってるよマルフォイ」
その手を取ろうとすると、突然入ってきたハリーに腕を引かれた。
「あいつ、ヤな奴だよ」
珍しく不機嫌なハリーに、Aは首を傾げた。
その後全員が箒を上げたのか、フーチ先生の声が響く。
「箒の柄をしっかり持って、落ちないように。笛を鳴らしたら一斉に地面を強く蹴ること。しばらく浮いて、そして前屈みになって着地します」
「いきますよ!1.2──」
先生が笛を吹く前に、ネビルの箒がフラフラと揺れて、浮きはじめた。
「何をしてるの!ネビル・ロングボトム!!」
ネビルは焦っているのか混乱しているのか、箒を制御できずに振り回されている。先生の声は聞こえているものの、暴れる箒についていけず振り落とされたネビルに生徒が駆け寄った。
落っこちた衝撃で、手首が折れてしまったようだ。
フーチ先生がネビルを連れて居なくなると、ドラコとその周りが笑いだした。
「見たか、あの顔。この思い出し玉を握れば、尻もちの付き方を思い出しただろうに」
その思い出し玉は、ネビルのお祖母さんがネビルに送ってくれたものだ。ハリーとドラコはバチバチと睨み合っている。
「返せよ､マルフォイ」
「嫌だね。ロングボトム自身に見つけさせる」
そう言うと、ドラコは箒に乗って飛び上がった。
「屋根にでも置こうか!」
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
