31話 ページ33
ギョッとしてハリーがAを見る。
「やめとけよA、君ってホント何でも知りたがるんだから」
立ち上がったAの腕を掴み、強引に隣に座り直させたロンが呆れた顔で言った。
「じゃあ、俺たちは行くぜ」
「また後でな」
フレッドがAの頭をもう一度ぐしゃぐしゃと撫で付けて、二人はコンパートメントを出ていった。『もう…』とAが手櫛で髪を直している。
静かに座っていたセトナクトは横目でA達を見て軽やかに立ち上がると、双子の後をゆっくりとついて行った。
『セティって、私よりも二人に懐いているみたい』
小さい頃から一緒にいるのに…とAが不貞腐れる。
あんな大きいけど一応猫だしただの気まぐれなんだろうけど。逆に言えばフレッドとジョージは悪戯好きで毎日何かしら爆発させるから、二人に懐く動物なんてセトナクトくらいなものだ。
「兄貴たちがごめんよ」
「全然!楽しそうな人達だね。僕兄弟っていないから、憧れるよ」
「……さっきの二人だけじゃないさ。僕の上には五人兄貴がいるんだ」
ロンが小さく溜息をついた。
「一番上のビルと二番目のチャーリーはもうホグワーツを卒業したけど、ビルは首席で、チャーリーはクィディッチのキャプテンだった」
「今年五年生のパーシーも監督生になって……フレッドとジョージは悪戯ばっかりしてるけど、成績は良いんだ」
話の内容に似合わない苦い顔をしたロンが、俯いて呟いた。
「期待に応えるのは大変さ。もし僕が何か凄いことをしたって、みんなと同じことをしただけだって思われる。スキャバーズも元々パーシーのだったけど、監督生になったから梟を買ってもらって、そのおさがりが僕にきたんだ」
『ロンにしか出来ないことはたくさんあるよ。モリーおば様だって、分かってるはずよ。そんな顔したら悲しいわ』
黙って聞いていたAがロンの頬をつつくと、やめろよ、とロンが照れる。
「そうだよロン。君はきっとすごい魔法使いになるよ。僕なんて、ヴォルデモートを追い払ったなんて言われるけどそんなこと──」
ロンとAか息を呑んだのに気づいて、ハリーはしまったと思った。
「君が、その名を呼ぶなんて」
「あぁ、ロン、違うんだ。僕ほんとに、名前を呼ぶことで勇敢に見せたかったとかそういう訳じゃなくて……その、ほんとに何も知らないんだ、僕……」
さっきのロンより落ち込んだ様子で、ハリーが俯いた。
「きっと僕、クラスでビリだ……」
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作者名：とま | 作成日時：2022年1月31日 23時
