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笑顔 ページ15

私が怖くはないのか。と聞こうとして
口を開き、しかし何と言えばいいのか出だしが思いつかず、

頭はすっかり真っ白になっていて
口をパクパクと先輩に向かって動かしただけだった。

へたりと地面に座り込んで涙を流しながら
霊幻を見上げるAの顔は涙で濡れ、
顔を拭ったのか、前髪が額に張り付いている。


「どうしてって顔してるな。」


図星を突かれ、驚いて思わず目を見開き
首の関節は錆びついているようにぎこちなくAは頷く。


「お前が泣いてんの見たからだよ。」


納得がいかないとばかりに
困惑顔を見せたAの様子を見て
霊幻が話を進める。


「泣いてんのは、自分で自分を怖がってるからだ。だろ?」
「・・・自分を・・・。」


今まで他人の安全や他人への迷惑、危害を常に考えていたAにとって

「自分を恐れている」という考えは
かなり斬新であり新鮮でもあった。

その言葉を聞いたAは
自分で止められなかった超能力による力の波動を
徐々に弱めていった。

徐々に葉の擦れる音は消え、
砂は何もなかったかのように制止した。

しかし、初めからそんな様子の変化は気付いていない。
とでもいうように霊幻は気取った調子で話し続ける。


「そうだな・・・そんな怖がりのお前を、俺が助けてやっても良いぞ?」
「・・・たすける・・。」
「そ、力の調節の仕方を俺から学べ。」


そう言って自信に満ち溢れた笑顔で霊幻は右手の親指を
ぐっと自身にむかって指し渾身のアピールをした。

場違いなほど明るく振る舞う霊幻だったが
慰めようとするその笑顔は自然だった。

その笑顔を見てゆっくりと
沁みるように口角をあげ、

Aは儚そうに微笑んだ。


「先輩の笑顔・・・初めて見ました。」
「え、俺いつも笑ってるぞ?」


少し片眉を下げて心当たりがない
といった具合に表情を歪めた霊幻に
Aは構わず微笑んだ。

その表情を見て落ち着いてきたようだ。と
判断した霊幻はAに右手を差し出した。


「どうだ?俺が教えてやろうか?」


陽の光に照らされチラチラと光る髪色の眩しさに
何かが大きく変わろうとしている前兆を感じながら

Aはにっこりと口角をあげて笑っている
霊幻を信じて、手取った。

霊幻は快くその手を握り
そのままぐっとAの手を引っ張って
Aを立たせる。


「じゃ、先輩。まずは私の家に行きましょうか。」


突然理解不能と驚きが混じったような可笑しな声が霊幻の喉から発せられた。

霊幻の真意→←事後



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Lemonaめろんそーだ。(プロフ) - めっちゃ続き気になります、、、 (2019年2月2日 23時) (レス) id: 410f0c8008 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - ありがとうございます (2017年8月9日 11時) (レス) id: e2cf070f5b (このIDを非表示/違反報告)
99(プロフ) - コメントをありがとうございます。読者様がそのように思ってくださっていることを知ってこの小説に定期的に取り組もうと再度思いましたので、明日投稿しますので宜しければ見てください。 (2017年8月9日 0時) (レス) id: 996208e53c (このIDを非表示/違反報告)
くるみ(プロフ) - 続きが凄く気になります (2017年8月9日 0時) (レス) id: e2cf070f5b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:99 | 作成日時:2017年5月11日 16時

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