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第六話 白髪の悪魔・後編 巫兎視点 ページ8

巫兎は、真っ直ぐ迫り来る白髪の束を静かに見つめた。

「ほう、諦めたの?
 あなた、やっぱり賢いわねぇ。
 大人しくそのまま、この私に喰われなさい! 」

 鬼は、油断したのだろう。
ほんのわずかだけ、攻撃の速さが遅くなった。
その隙に、私は体の向きを少しだけずらした。
すると、白髪の束は私の刀のみ捕らえた。
しかし何か思い立ったのか、刀を持っている手ごと、もう一度刀を髪で包んだ。

「へぇ……、そういうことね。
 刀を犠牲にして逃げようとしたの?
 でも、残念だったわね!
 私もそこまで馬鹿じゃないから、それくらいすぐ考えればわかるのよ!
 さぁ、いい加減堪忍(かんにん)しな! 」

 そう言うと、女鬼は勢いよく巫兎を自分の手元に引き寄せた。

 ふっ……、かかった。

 私は少しだけ口角を上げると、呼吸を整えた。

「……、私が諦めるわけないでしょ」
「っ! そんな、まさか! 」
「全集中・風の呼吸、参ノ型晴嵐風樹(さんのかたせいらんふうじゅ)! 」

 私は自分の手が囚われたまま、女鬼より強い力で刀を己の方に引き寄せた後、
自分を中心に旋風の渦が逆巻くように刀を振り、鬼の首を斬った。
そしてわずかに刀に残った女鬼の髪を振り払うと、静かに刀を鞘に収めた。

「ウッウッ……。
 私の、美しい顔を地面に落とすだなんて!
 許さない、許さない!
 そんなまさか、私の間合いに入ることが目的だったなんて……!
 なんて醜いのかしら!!
 お前、人に好かれないだろう! かわいそうに!
 アッハッハッハッ! 」

 女鬼は塵となって崩れ散る最期の最期まで、私を罵倒し続けた。
その姿は、まさに愚かで醜かった。
私は鬼の首があった方を少し見ると、目を細めて吐き捨てるように言った。

「人に好かれたいなんて、思うわけないじゃない…… 」

 私は来た道に背を向け、また静かに駆け出した。
 





*作者より*
皆様、いつも小説を読んでくださり、有難うございます。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
先日、総合ランキングにランクインしました。
本当に有難うございます。
これからも何卒、宜しくお願いします。

第七話 藤の花の下でもう一度・前編 炭治郎視点→←第五話 白髪の悪魔・前編 巫兎視点



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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:庵原史穂 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年12月22日 21時

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