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第二十二話 操り人形 巫兎視点 ページ25

ありえない光景に、私はただ呆然と眺めることしか出来なかった。

「み、皆早く逃げるんだ!
 早く山から降り……! 」
「ギャァ! 何なんだよ! 」
「助け……」

はぁ、はぁ、はぁ。
どういう事、何が起こってるの?
幻影? 血鬼術?

私が動けずにいると、突然腕が何者かによって後ろに引っ張られた。
私は咄嗟に刀で引っ張っている者を斬った。
我にかえり、後ろを振り返るが誰もおらず、
刀についているはずの血は見当たらず、代わりに細い蜘蛛糸が引っかかっていた。

な、何? 糸?
今私を引っ張ったのは誰?
取り敢えず落ち着かないと。
このままだとここにいる全員が死ぬ。

軽く深呼吸し全神経を集中させてみると、カサカサカサカサという音が微かに聞こえた。
聞こえた方を見てみると、小さな蜘蛛がいた。

蜘蛛? しかもこんなにたくさん、何で……。
待って、よく見てみると皆んなの動きが不自然。
まるで何かに操られているような……。
蜘蛛、糸、操る……! 操り人形!
突然動きが変になったのは、この蜘蛛たちに操り糸を巻かれたから。
なら、この蜘蛛の糸を操っている鬼を探し出して頸を斬れば。
その前に、繋がっている糸を切っていけば!

しかし、私がそう考えている間にも蜘蛛は私の体に糸を巻きつけ始めた。

だめだ、自分の糸を切るので精一杯。
蜘蛛は小さすぎるし、こんなの全部潰してたら夜が明ける。

「とにかく自分の体に付いている糸を切って!
 そうすれば斬り合いにならなくて済む!
 糸を引いているのは小さい蜘蛛だから! 」

私が声を張り上げて言うと、皆驚いた顔でこちらを見た。

「死にたくないなら、自分のことは自分で何とかして」

そう言うと、慌てて己の糸を切り始めた。
しかし、鬼もこちらの動きの変化に気がついたのだろう。
糸を切れないように、隊員の腕をねじり上げ始めた。

「ギャァァァ! 」
「……骨がァ! 」
「イ、イタイ! 」
「や、やめてくれぇ! 」

その場に響く、骨が折れる音と隊士たちの断末魔は混じり合うことはなく、
不協和音となり、山の木々を震わせた。
気がつくとほとんどの隊士が変わり果てた姿になっており、
かろうじて生きているのは私と、村田さんだけだった。

「よ、良かった、志那戸辨さ……」
「危ない! 」

村田さんに斬り掛かっていた隊士を、足でめいっぱい蹴飛ばすと、
村田さんを抱えて木の枝まで飛んだ。

「有難う、助かったよ」
「いえ、別に」

下を見ると、屍となった隊士たちがまるで操り人形のようにひたすらお互いを斬り合っていた。

第二十三話 無駄にしない 巫兎視点→←第二十一話 那田蜘蛛山 巫兎視点



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庵原史穂(プロフ) - 西村莉唯(りあ)さん» 西村莉唯様、温かいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えるようこれからも精進して参りますのでよろしくお願い致します♪ (2022年3月6日 17時) (レス) id: 0038db6d5e (このIDを非表示/違反報告)
西村莉唯(りあ)(プロフ) - 更新したら私即見ます!なので頑張ってください! (2022年3月6日 16時) (レス) id: 929c6fdeb8 (このIDを非表示/違反報告)
庵原史穂(プロフ) - 夏美さん» ありがとうございます! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 0d9f41f564 (このIDを非表示/違反報告)
夏美(プロフ) - 更新頑張ってください! (2022年2月19日 22時) (レス) id: 5adf9ec04a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:庵原史穂 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年12月22日 21時

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