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(コナン視点)
小五郎のおっちゃんが依頼人に指定されてやってきた、待ち合わせのバー。
そこで安室さんとメルローが並んで座っているのを見つけたときは、心底驚いた。
(安室さん、ついにメルローを探し出したのか!?)
しかしそう思ったのも一瞬だけ。
メルローとともにいるにしては、安室さんの表情があまりにも固かった。
つまりあれはメルローではなく、メルローそっくりに変装できる人物。
そう……ベルモットであると考えるのが自然だ。
(やべえ、おっちゃんが何かしでかす前に立ち去らねえと…)
「麗しいお嬢さん、お名前は?」
「おじさん!!」
流石だおっちゃん手が早い。
それは少なくとも、ぴったりと安室さんにくっ付いている女性に向かって言うセリフではない。
突然おっちゃんのナンパに遭遇したにも関わらず、メルローに扮したベルモットは特に動揺することなく「佐藤千佳子」と短く名乗った。
その隣では安室さんが戸惑った顔をしている。当然だ。
なおも会話を続けようとしたおっちゃんにヒヤヒヤするも、タイミング良くおっちゃんの携帯に着信があった。
それは依頼人からの電話で、「今回の依頼は無かったことにして欲しい」という内容だったようだ。
これで帰れると俺は内心ホッとしたのだが、期待に反しておっちゃんはテコでも帰るつもりはないらしい。
どうやらドタキャンされたことに怒っているようである。
相当面倒な拗ね方をしている。これは厄介だ。
俺はいよいよ焦り始めた。
ベルモットとバーボンが揃っているのだ、この場に組織の他の連中が現れないとも限らない。
そうなった場合に奴らと鉢合わせないためにも、早くここを立ち去らないと。
ほぼ冷静さを欠いた俺はしきりにベルモットの様子を確認する。
そんなときだった。
ベルモットがとある方向を見つめて、わずかに目を見開いた。
(え?)
「あれ?篠崎さんじゃないですか。」
ベルモットの表情の変化に気を取られていた俺は、新たな来客に気づくのが一瞬遅れる。
後ろを振り返ると、見知らぬ男性にエスコートされる篠崎Aさんがそこにいた。
何故彼女がここに?
いや、それよりも…
(今、ベルモットは何を見ていた?)
まさか彼女を?
いや、そんなはずは…
–––––––バタンッ!!
そのとき、俺の思考を断ち切るかのようなその音が、静かなバーに響き渡った。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時