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それにしても高級ホテルのような内装の船である。
シアターがあることにも感心したが、ゲームセンターも普通に用意されていることに驚いた。
クルーズに来てまでやることではないとも思ったが、それなりに盛況なようで、人がまばらに存在していた。
(まあこの広大な施設を100人程度で利用するっていうのが贅沢すぎるもんな…)
今回のクルーズは先行イベントらしいので乗客の数が少ないが、一ヶ月後に本格始動すれば定員600名となるらしい。
今回乗っているのは抽選で選ばれた20組プラス造船に関わったお偉方で、あとは全て運営側だという。
もっと人が混んでいた方が今の私にとっては都合が良いのだが、申し込んだのは自分だ。
運営側を恨むことは出来ないだろう。
そう思いながらピコピコとゲームをプレイしていると、入口の方から元気な声が聞こえて来た。
「すっげー!ゲーセンがあるぞ!」
「げっ元太くん、待ってくださいよ!」
「わー♡これ遊んでも良いのーっ!?」
「こらあなたたち!走っちゃダメよ!」
てっ天使たちの声やーーーーーッッッ
コナンくんはいないみたいだけど、彼以外の4名の探偵団がこちらに遊びに来たらしい。
私はゲームを終了して、少しだけ彼らの姿を見てから退出しようとした。
天使たちはどこかな、と若干ストーカー紛いの思考をしながら歩いていると、向こうから走ってくる女の子を発見した。
歩美ちゃんである。
あ゛〜〜可愛い〜〜と癒されながらすれ違おうとしたのだが、歩美ちゃんは私の目の前で、足をもつれさせて転びそうになった。
私はとっさにその体を支えて、天使の御身に傷がつかないよう計らう。
あっ…………軽すぎる……………
「怪我はないか。」
この口調ビビられるかなと思いつつも声をかけると、歩美ちゃんは「あっ…うん!」と花が咲き誇るような笑顔を見せた。
「ありがとうお姉さん!」
無事解脱しました。
ありがとうございました。
「吉田さん!」
「あ、哀ちゃん!」
私が悟りを開いていると灰原さんが駆け寄って来た。
「じゃあ、気をつけて。」
「うん!またねお姉さん!」
私がゆっくり立ち上がると、歩美ちゃんは笑顔で手を振ってくれた。
私は頬が緩みそうになったものの佐藤千佳子パワーで無表情に徹する。でも手は振った。
こうして私はゲームセンターを後にしたのだった。
どこか様子のおかしい灰原さんに気づかないまま。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時