70 ページ23
「さっきあのイケメンに話しかけられてましたよね？もしかしてー、彼氏ですか？」
興味津々といった感じで話しかけてくる女子大生に狼狽する私。
あのイケメン、と指差された方には安室さんの姿がある。
その真剣な横顔の凛々しさたるや…
とても恐れ多くて彼女なんて名乗れない。
お嬢様時代の私はなんの意図があって交際を持ちかけたんだ…やっぱり鋼メンタルだったんだな…
「いや、違う。」
「えーほんとにい？」
「本当に。」
努めて何でもないように振る舞うと、女子大生は納得したらしくつまらなそうに身を引いた。
やっぱりこのくらいの歳の子は恋バナに目がないものなのだろうか。
「千佳子さん、でしたっけ？このクルーズには友達と一緒にいらしたんですか？」
「いや、ひとりで。そちらは？」
「私もひとりです♡さっき知ってる人は何人か見かけたんですけどねー」
「じゃあ、事件に巻き込まれたあなたのことを心配してるだろうね。」
「そっかなー、でもたぶんあっちは私に気づいてないからなー」
話し方の割には随分さっぱりした子だな、という印象を受けた。
友達になるならこういう人が良い。
……と思ったけどまさか今世の私、友達いない……？
そんな……
思わぬところでショックを受ける羽目になった。
そんな傷心の私に、女子大生はにこっと話しかける。
「ねえねえ千佳子さん！事件が早めに解決したら、港に着くまで私とお話ししてません？」
「え。」
いきなりの申し出に目をパチパチと瞬かせる。
けれど悪くないお誘いだ。
事件が解決したらいよいよバーボンこと安室さんとのお話タイムが始まってしまうだろうし、そうなったらディスクの話は避けられない。
安室さんは公安の人だから大丈夫かとも思ったけど、油断は禁物だ。
彼には赤井さんを組織に引き渡して大手柄を上げ、組織の中心に食い込もうとした前科がある。
今回も、私を捕らえディスクを押さえたうえでボスの御前に引っ立てようという目論見がないとも限らない。
そんな安室さんと二人きりの状況にならないためにも、彼女と先約を作っておくのも悪くない。
ちょうど話しやすい子だし……
「分かった。」
彼女の顔がパッと華やぐ。
「やったー♡じゃあ後でお部屋行きますね！何号室ですか？」
「えっと、306号室。」
「了解でーす！」
可愛い子だなあ！
あとはこの子が犯人でないことを祈るばかりである。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しま | 作成日時：2018年4月29日 21時
