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ついにお見合い当日。
「すみません遅れました。仕事に区切りがつかず…」
お見合いは午後八時からの予定だったが、仕事人間であるという坊ちゃんが遅れに遅れてやって来たためほぼ一時間遅れのスタートになった。
早くも計画が狂い倒してしまって私は遠い目をする。
本当ならこの時間には家に帰ってるはずだったのに…
まあお相手様は一見する限りそれなりのイケメンだが、話に聞いていた通り気難しそうな顔をしている。
仕事が恋人と言われても納得だしむしろ今そう言え!早く切り上げさせろ!私をおうちに帰して!
そんな内心の荒ぶりを微塵も悟らせることなく、私はニコリと微笑んだ。
あむぴから学んだ作り笑い、今やらずしていつ披露するか。
「こんな時間までお仕事ですの?とても熱心で素敵ですわね、お疲れではありませんこと?」
暗に『私を待たせてまでする仕事は楽しかったか?こっちはもう疲れた』と皮肉を言うも、相手様はぽかんと口を開いたまま何も喋らない。
む、初っ端からスパートかけすぎたか。
本来の私はもうちょっと温厚なのだが、今は事情が事情だ。
遠慮なく拳を打ち込ませていただく。
「あら…よく見ればそのお姿、お仕事帰りそのままですわね。スーツにシワが…そんなにも急いで来てくださったのね、律儀な人。」
「あ、いえ、その…」
「ウフフ、ごめんなさい?そうまでして会いに来た女が私のような者で…忙しいあなたには、その疲れを癒せるような柔らかく包容力のある方がぴったりだと思いますわ。」
最後にとびっきりの笑顔で小首を傾げながら言うと、ついに相手様の顔が真っ赤に染まった。
おお、おお、あまりの怒りに震えておるわ。
私の煽りスキルすごくね?カンストしてね??
互いの親を置いてけぼりにした(ついでに見合い相手も置き去りにした)話し合いは早々に決着がつきそうだ。
私がにこにこと笑顔を崩さずにいると、相手様がガタンっと音を立てて立ち上がった。
そしてつかつかとテーブルを回って私の隣にやってくると、私の手を取って強引に立ち上がらせる。
あっ待ってね暴力はダメだよ、ごめん煽りすぎたすみませんすみませ––––––
「ッ僕と!結婚を前提にしたお付き合いをしてください!!」
………………んっ?
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月29日 21時