爆裂ワガママお嬢様が前世を思い出したら (ページ10)

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(コナン視点)

その女が来店したとき、俺たちは露骨に嫌な顔をした。

篠崎A。

鈴木財閥にこそ劣るが、言わずと知れた大企業の娘。

それは絶大な影響力をもって、ある日このポアロに襲来した。

ターゲットはこの店の店員、安室透だった。

来店早々に「私とお付き合いなさい」と頬を染めながら高圧的に告げたその女。

娘は散々な性格だがその父が持つ権力は相当なもの。

いち探偵兼バイトとして過ごす「安室透」という男は、その圧力には逆らえなかった。

『まあ、あちらが飽きるまでの辛抱ですね。』

安室さんのことを心配した蘭達や梓さんに、彼は疲れたような笑顔でそう答えた。

安室さんの心労なぞ露知らず、恋に溺れたその女はほぼ毎日のようにポアロに通い詰めた。

安室さんの連絡先を知らないため、接触の機会はここしか有り得なかったのだ。

しかも女はろくに注文をするでもなく、安室さんが手ずから作ったものしか口に入れなかった。

梓さんのことは視界にも入っていなかったようだ。

店の迷惑になるからと、連絡先を提供しようとする安室さんを全員で止めた。

はぐらかせるうちは、はぐらかした方が良い。

安室さんの顔は、疲れ切っていた。

・

園子は嫌悪感丸出しに睨み付け、蘭は不安そうに梓さんを見た。

梓さんは意を決した様子で対応する。

「あ、安室さんは、今外に出てて！
戻ってくるのがいつになるのか、分からないんです……」

嘘だった。

安室さんには店の奥に避難してもらっている。

昨日は行きたくもないデートに連れ回されているのだ。

連日で会うことによるストレスを少しでも軽減してもらおうと、時々居留守を使っていた。

こう告げると大抵の場合、女は不機嫌になる。

いつ帰ってくるか、すぐに連絡しろ、いやそれよりも私に連絡先を教えろと煩い。

園子とともに毒を吐く準備をしていると、女は「あら」とこぼした。

「そうでしたの。でしたら申し訳ないけれど、伝言を頼めます？」

「え！？は、はい！！」

いつもの彼女とは思えないその態度に、俺たちは目を丸くした。