爆裂ワガママお嬢様が前世を思い出したら (ページ35)

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(安室視点)

バルコニーから走り去ったコナンくんの姿を確認してから、依然としてバルコニーに留まったままの篠崎Aを盗み見る。

「もー……仕方ないなあ。」

手のかかる子を見るような優しげな目つきで、ほんのりと苦笑を浮かべる彼女。

そこからコナンくんに対する嫌悪や怒りといったマイナスの感情は、一欠片も読み取ることが出来なかった。

(やはり以前とは別人だ。)

態度も雰囲気も口調も何もかも、自分の知る『篠崎A』と重ならない。

以前の、自分に交際を持ちかけ、うっとりとした顔で恋に溺れきっている女の顔をしていた篠崎Aとは、一体なんだったのか。

まさか––––あれが全て演技だったとでも言うのか。

あの恋人時代に、彼女に違和感を感じたことなんて、ただの一度きりだけだ。

それは彼女から別れを切り出される一日前のこと。

その日までは、彼女の態度に不自然さなど一度として感じたことはなかった。

一点の曇りもなく––––––「安室透」という男に惚れ込んでいるものだと、思い込まされていた。

(だが…演技をしてまで俺に近づいてきた理由が分からない。)

なぜ彼女はそのような芝居を打ったのか。

まさかハニートラップ？

しかし、あれは重大な機密情報の奪取を目的として行われるものだ。

ただの「私立探偵とバイトを両立する安室透」に仕掛ける理由が見当たらない。

いや……待てよ。

もし仮に篠崎Aが、安室透の別の顔––––すなわち公安としての立場、ないし潜入中の例の組織での地位を、事前に知っていたとしたら？

公安警察に属する降谷零。

例の組織でコードネームを得たバーボン。

どちらも、ハニートラップを仕掛け情報を探るには申し分ない相手となる。

彼女が俺に近づいたのが、ハニートラップのためだったどうかはまだ分からない。

しかし篠崎Aという人物が、表と裏の顔を使い分け、俺に近づいたという事実は確定している。

だからこそ俺は、彼女に再び笑いかけた。

「やっぱり、仲が良いんじゃないですか。」

彼女の「真実」を突き止めるために。