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突然膝をついた私に驚いたようで、安室さんは焦りながら「大丈夫ですか!?」と声をかけてくれた。
こんな好感度マイナスの女のことも心配してくれるなんて……
私は改めて安室透という男の尊さを思い知った。
そうこうしている間にも、私はちまちまと今までの記憶を取り戻していた。
まだ全容はさっぱり見えないが、やはり安室さんは今世の私の恋人らしい。
訳がわからない。
何故あの【尊さ:EX】の至高の存在が私との交際を受け入れたのだろう。
思い出せているだけでも今回の私って嫌な女なんだけどな。
歩けば文句。
振り返れば罵倒。
いい男を見つければ途端に猫なで声を発する生命体。
それが【ヒト科・シノザキ】の生態だったようである。
いいとこのお嬢様としてとにかく甘やかされ、性格がねじ曲がってしまったらしい。
いやでも同じお嬢様でも鈴木園子はとても良い子だし……やっぱり自分自身のせいか。
安室さんも、そんなお家柄だけは立派な私からの交際を断れなかったのだろう。
主に権力という名の圧力によって。
周囲の人間はともかく、家族は私を溺愛しているみたいだし。
だいたい分かってきた。
今の私は、【みんなの天使安室透を無理矢理自分の恋人にした悪女】だ。
やだ死にたい。
スタートダッシュから既に好感度マイナス振り切れて好感度メーターすら存在していない。
「あ、いえ……ウフ、なんでもありませんわ。」
この口調が今世の私のデフォルトらしい。
中身と外見が伴ってないよお……恥ずかしいよお……
「ご気分が優れないようですが……本日は早めにご帰宅なさった方がよろしいと思います。名残惜しいですが。」
安室さん、早く離れたがってるな……
安室さんの思考が手に取るようにわかる。
バーボンとしての企みとかならさっぱり見抜けないだろうけど、今の「私という存在に嫌悪する」彼の思考ならパーフェクトに読み解ける。悲しい。
取ってつけたような「名残惜しいデスガ」に爆笑したい気持ちを抑えつつ、私は笑顔を貼り付けた。
「そうしますわ。お優しいのね……ありがとう、愛しい安室さん。」
この口調慣れねえええと心の中で壁打ちしながら笑顔を浮かべる私には、安室さんの驚いたような表情に気づけるような余裕は、残っていなかった。
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作者名:しま | 作成日時:2018年4月22日 16時