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パンケーキおいしかった。
ポアロを出てからそんな言葉しか浮かばない。
何あれ超美味しい。
また行きたいけど当分は無理だろうな、警戒されてたし……
私はスイーツに対する感嘆の意と、気軽に足を運べない憂いの意を込めて、そっと息をついた。
・
夜7時。
安室さんが指定した時間だ。
ポアロにて梓さんが安室さんに連絡を取ってくれたらしく、そこで夜7時に××で、との約束をしてくれた。
別にポアロ前でも良かったんだけど、気を遣わせてしまったか。
まあ私だもんな。
指定された時刻の10分前に指定された場所へ行く。
勿論マップアプリを使った。
明日からは近所の探検とかしようかなあ。
近場や隣町の地理は把握しておきたい。
指定された場所は、夜景の綺麗なところだった。
月に照らされる人影がひとつ。
安室さんが既に到着していた。
「めっちゃ絵になる尊い……」
天を仰ぎたくなる衝動を堪えながら、安室さんのもとへ歩く。
「安室さん。」
「……こんばんは、良い月夜ですね。
昼間はお会いできず、申し訳ありません。」
安室さんは謝罪しつつ、私を隣へと促した。
私はそれを受け止めつつ隣に歩み寄る。
「それで、お話とは？」
安室さんが遠慮がちに尋ねた。
困り眉アンドタレ目。
……まったくお前は！お前という男は！
天からいくつ贈り物をいただいたんだ！言ってみろ！
あまりのご尊顔に合掌したくなる。
そんなことをすると怪物を見る目をされることだろうから自重しつつ、話を切り出す。
「ごめんなさい、お別れをしなければなりませんの。」
安室さんが弾かれたように顔を上げた。
なんか目に光が灯っている。
こ、こやつめ〜〜〜
いやそりゃあそうなるだろうけど。
私はべらべらと理由を語った。
今まで交際を認めてくださっていた父から、今回見合い話を持ちかけられたこと。
相手は父が懇意にしている企業の息子で、今後の交流に差し支えるからあまり断りたくないらしいとのこと。
その見合いを受けるために恋人たる安室さんとの関係を解消しなければならないこと。
まあ全部嘘ですけど……
おいおいと泣く私。
安室さんは私の背を撫でながら「残念です……でもそういうことなら……」と早くも関係解消ムードである。
おいこら。
こうして私たちは、ヌルッとお別れに至ったのだった。
この後、あんなことになろうとは知らないまま。
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作者名：しま | 作成日時：2018年4月22日 16時
