かざぐるま。【鬼滅の刃】

風車は廻る　漆 ページ7

＊


「たのもーう、しのぶちゃんいる？」

「道場破りの方は呼んでいませんが」

「たまには変わり種の挨拶もいいかと思って〜
······目、冷たっ」


冷ややかな視線を向けられた。
まだ秋も始まったばかりだというのに、
ここだけ南極もびっくりの寒さだ。



そんな視線を一瞬で引っ込めたしのぶは、
先程とはうって変わって、優しげな顔をした。


「久しぶりですね······やっぱり柱は
忙しいんですね」

「そうだね〜なかなか自分の時間も
取れなくて」

「Aさんがここに来たということは、
葛桜を食べに来たんですか？」

「しのぶちゃんの中で、
私が来る=葛桜を食べに来た、なの······？」

何も言わないしのぶ。

カナエに慰めてもらった心の傷口が開きそう
だったので、もう何も言わないことにした。


取り合えず中に入ってはどうですか、という
しのぶの言葉に甘えて、蝶屋敷の中に入る。

カナエは別件の用事が入り、少し遅れて
来るそうだ。

しのぶと廊下を歩きながら、そんなことを
話しながら歩いていた、のだが。





「ああ、木柱様！ この後、稽古をつけて
頂けませんか！？」

「木柱様、最近壱の型の精度が落ちて
しまって······」

「どうすれば木柱様のように木の呼吸を
攻撃型に変えられるのでしょうか？」

「うおううおうおう······あっ、ちょっ、
まっ」


廊下ですれ違った隠の人達に、
見事に囲まれてしまった。

人が人を呼び、軽く収拾のつかないことに
なりかけてきた。

しのぶの計らいで、なんとか人混みを脱出
することができたが、疲労感が半端じゃない。





「いやあ······人気ですね、木柱様？」

「しのぶちゃんまで······そんな、大した
ことじゃないでしょ？」

やれやれと言わんばかりに肩をすくめるA。



「いいえ、そんなことないですよ！
私の見立てだと、Aさんが死んだら
『木の呼吸』の攻撃型はなくなりますよ？」

まっさかあ、と私は軽く笑い飛ばす。
誰かしらが使えるようになるだろう。私の
継子とか？優秀だし。



そんなAの様子を見て、しのぶは溜め息を
吐きたくなる。

この柱は、自分のやってのけた事の異常性に
気付いていないのだ、と。

風車は廻る　捌→←風車は廻る　陸

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す