風車は回る 卅伍 ページ35
＊
「次の任務で、禰豆子も俺も、死にません
ように······」
「禰豆子ちゃんと結婚できますように！」
「強い奴と戦わせろ！」
『なんか······私が言えたことじゃないけど
個性強い』
噂通りに願ったのは炭治郎だけだった。
伊ノ助にいたっては、お願いどころか命令
である。
そんな彼らを、しのぶはただ黙って見つめて
いた。
『······しのぶちゃん？』
「さて、そろそろ行きましょうかね。
炭治郎くんたちも、柱稽古の途中でしょう？」
『待って、待ってよしのぶちゃん。お願い
して！あなた、今自分がどんな顔してるか
分かってる！？』
伝わらないと分かっていても、叫んでしまう、
手をのばしてしまう。すいっ、と私の手が
空を切った。
『しのぶ、ちゃん······ッ！』
「······分かっていますよ。でも、私が勝つには
これしかないんです。あなたなら、分かり
ますよね？」
『······え』
「いるんでしょう、Aさん。分かります、
なんとなくですが······」
声も出ないとはまさにこの事か。
しのぶちゃんは、私のことを真っ直ぐに見つめていた。
「さようならです、Aさん。また、
『そちら』でお会いしましょう」
『え······駄目だよしのぶちゃん、まだ
こっちに来ちゃ駄目。あなたはまだ死んじゃ』
「しのぶさん？どうかしましたか？」
「いいえ、なんでもありませんよ。行きましょうか」
そう行って歩き始めたしのぶちゃんは、
二度と振り返ることはなかった。二度と。
まるで、振り返れば決心が揺らいでしまう、
とも言いたげに。
できることは無いと悟ってしまった私は、ただ
呆然と立ち尽くしてしまうしかなかった。声の出せない私の言葉を代弁するように、風車は
からからと音をたて、いつまでも回り続けていた。
＜Fin.＞
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ぺぽん(プロフ) - とても良いお話でした。最初、明るくて優しくて夢主ちゃんが少し羨ましかったけど、まさかあんな過去があって、ずっと秘めていた暗い思いがあったなんて…素敵な物語をありがとうございました！ (11月25日 11時) (
レス) @page37 id: 7908095bba (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます！意識していたところが伝わってとても嬉しいです……！NGワードの件、初めて知りました。余計な口だなんてとんでもないです……！自分でも気になっていたところなので、ありがたいです。 (2021年2月15日 18時) (レス) id: 476e4d3430 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - 結果としての救いの無さ、好きです……………少しずつすれ違っていって、取り返しがつかなくなってから気付く、そんなしんどさがすごく良かったです…… (2021年2月6日 23時) (レス) id: fda4a3ac18 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - fubukiさん» コメントありがとうございます！fubukiさんの琴線に触れるような文を書けていたなら、こちらも嬉しいです！！ (2020年10月13日 19時) (レス) id: 4e72ee7982 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - 泣きました。夢主ちゃんいい子ですね。 (2020年10月12日 19時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミオ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/userid10262/
作成日時：2020年5月30日 10時
