風車は廻る 廿捌 ページ28
＊
「······杏奈。私の周りは、血の海なんだよ。
そして私自身も、真っ赤に手が汚れている」
そっと目を伏せて言う。
「あなたの苦しみも確かに分かる。でもそれは
あなただけじゃない。教えてあげよっか。私、
この任務が終わったらーー」
不意に吹いた強風が、私の声を遮った。
けれど、杏奈には届いたようなので良しとする。
「ッ師範······あなたはそこまで？
これだけのことをしてもまだ、まだ足りない
って言うんですか······？！」
私は黙って頷くことで肯定する。きっと今の
私の瞳は、誰よりも濁っている。柱として
ありえないくらいには。
杏奈が動揺したスキをついて、接近戦を
仕掛ける。卑怯だとは思う。しかし、それ位
しなければ負ける。油断なんてできない。
木の呼吸、陸ノ型ーー朧々雪月花
「っ、卑怯ですよ······！？」
「それは私も思ってる。けど、杏奈は
強いから。私が一番よく知っているよ」
「また、またそんな事を言って、私を
惑わすんですか······もう、止めてくださいよ」
「止めないよ。あなたは、ただ誰かに認めて
欲しかっただけ。でもそれを突っぱねたから、
引っ込みどころがわからなくなっちゃった
んだよね」
真っ直ぐ杏奈を見抜けば、彼女は怯えたように
怯んだ顔をする。図星を突かれた時の顔だ。
「あなたは誰よりも頑張っていた。
もしかしたら、私以上かもね。いつもの
鍛練が終わって、私が去ったら、すぐにまた
稽古を始めていたでしょ？」
これ以上は聞かないとばかりに杏奈は切っ先を
私につきつけてくる。けど、その手が
カタカタと震えているのが、私にはハッキリ
見えた。
「ずっとずっと頑張ってきた。けれどやれども
やれども結果は見えてこない。認めてくれる
人もいない。いや······『誰かが認めて
くれても、自分は受け入れられない』」
そこで私は気が付いた。普段の私は、ここまで
頭が回り、人の心理を見抜くことはできない。
だが、ここまでスラスラと言葉が出てくると
いうことはーー
「······そっか。同じ、なんだね。私も、
杏奈も······似た者同士の師弟、ってわけか」
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ぺぽん(プロフ) - とても良いお話でした。最初、明るくて優しくて夢主ちゃんが少し羨ましかったけど、まさかあんな過去があって、ずっと秘めていた暗い思いがあったなんて…素敵な物語をありがとうございました！ (11月25日 11時) (
レス) @page37 id: 7908095bba (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます！意識していたところが伝わってとても嬉しいです……！NGワードの件、初めて知りました。余計な口だなんてとんでもないです……！自分でも気になっていたところなので、ありがたいです。 (2021年2月15日 18時) (レス) id: 476e4d3430 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - 結果としての救いの無さ、好きです……………少しずつすれ違っていって、取り返しがつかなくなってから気付く、そんなしんどさがすごく良かったです…… (2021年2月6日 23時) (レス) id: fda4a3ac18 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - fubukiさん» コメントありがとうございます！fubukiさんの琴線に触れるような文を書けていたなら、こちらも嬉しいです！！ (2020年10月13日 19時) (レス) id: 4e72ee7982 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - 泣きました。夢主ちゃんいい子ですね。 (2020年10月12日 19時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミオ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/userid10262/
作成日時：2020年5月30日 10時
