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風車は廻る 拾玖 ページ19




「私の家族は、鬼に殺されました。それは、
師範もご存じの通りです。それを見て、
私は······」

そこで、杏奈は一旦言葉を切った。
その顔には、言いようのない幸福が
浮かんでいる。




「私は、驚きました、そして何より感動した。
人の命を、軽々しく、それこそ花を摘むかの
ように奪う『鬼』という存在に」

「それで、家族を襲った鬼を拷問しました。
やり方は分かりませんでしたけど、簡単には
死なないので助かりました。そして、鬼になる
には、鬼の始祖の血が必要と分かった」

「······それが、鬼殺隊に入った理由。
······鬼の始祖に近付くには、鬼に近付くのが
一番早い······」

「そうですそうです! 師範は話が早くて
本当に助かります〜」


にこやかに手を叩く杏奈の姿には、もはや
狂気しか感じない。

杏奈は、ここまで狂っていたのか。
私にその気配を微塵も感じさせずに、そんな
感情を燻ぶらせていたのか。何年も、何年も。


けど。そんなことはどうでもいい。
取り敢えず、私は杏奈を切らなければ。
鬼殺隊の柱として、杏奈の師範として。


番傘の柄から刀を引き抜く。
海松茶(みるちゃ)色の刀が、月の光を反射して
鈍く光った。

木の呼吸があまり歓迎されないのは、
この色にも原因があるのかもしれない。
海松茶色は、他の呼吸のように、鮮やかな色を
しているわけではないから。



「え〜、もう話はおしまいですか?まだ、
とっておきのお話があるのにー······」

「何かな?あんまり、時間はなさそうだけど」

「私が、なぜ師範の継子になったか、ですよ。
気にならないんですか?」


月明かりを背にして微笑んだ杏奈の姿には、
もともとの美貌も相まって、いっそ恐怖すら
感じた。

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ぺぽん(プロフ) - とても良いお話でした。最初、明るくて優しくて夢主ちゃんが少し羨ましかったけど、まさかあんな過去があって、ずっと秘めていた暗い思いがあったなんて…素敵な物語をありがとうございました! (11月25日 11時) (レス) @page37 id: 7908095bba (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - 砂漠のうさぎさん» コメントありがとうございます!意識していたところが伝わってとても嬉しいです……!NGワードの件、初めて知りました。余計な口だなんてとんでもないです……!自分でも気になっていたところなので、ありがたいです。 (2021年2月15日 18時) (レス) id: 476e4d3430 (このIDを非表示/違反報告)
砂漠のうさぎ(プロフ) - 結果としての救いの無さ、好きです……………少しずつすれ違っていって、取り返しがつかなくなってから気付く、そんなしんどさがすごく良かったです…… (2021年2月6日 23時) (レス) id: fda4a3ac18 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - fubukiさん» コメントありがとうございます!fubukiさんの琴線に触れるような文を書けていたなら、こちらも嬉しいです!! (2020年10月13日 19時) (レス) id: 4e72ee7982 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - 泣きました。夢主ちゃんいい子ですね。 (2020年10月12日 19時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミオ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/userid10262/  
作成日時:2020年5月30日 10時

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