夏夜の幻想【五条悟】

おじいちゃん ページ8

夏だなぁ。

仕事終わり、夕食の材料を買うためにスーパーに入った瞬間の涼しさは、至福だ。
最近は、外を歩くのが暑くなって来た。


悠仁のお世話を始めて、私にできる事の一つは胃袋をつかむことだと思い至った。

修行の上で体調と栄養を整えるのは必須！という私の持論である。

最近は五条さんもおまけでついてくるようになった。
今日も、特訓後に2人が来る予定だ。


入り口で、早速、仏花を選んだ。

スーパーに寄ったのは、夕食以外にもう一つの理由がある。


きっかけは、悠仁の一言。

「じいちゃんの法要、できてないなぁ」

ぼそっと呟いて、すぐに話題を逸らしていた。
考えてみれば、そろそろ四十九日の法要の時期だ。

でも、今の悠仁に帰省は出来ない。

どうしてあげたらと悩んだ末、我が家に簡易的な仏壇を作ることにした。

机に白い布をひいて、お線香を置く。お花もお供えすれば。

「でーきた！」

本当に簡易的だけど、とお線香に火を灯して手を合わせた。

線香の匂いにつられて、ふと色んな顔が浮かんだ。

私の同級生、先輩、後輩。

この仕事をしていると、仲間達もたくさん亡くなっていく。

切なくなってきて、慌てて頭を振り払った。


「悠仁のおじいちゃん。悠仁は今日も元気に生きてますよ。最強呪術師もついてるから、安心してね」




晩ごはんの支度を丁度終えたところで、修行を終えた悠仁と五条さんがやって来た。

早速、悠仁におじいちゃんの写真を借りて写真立てに入れた。

作りたてのごはんを小さい食器に入れてお供えする。
これで仏壇の完成だ。

手招きして悠仁に見てもらえば、びっくりして目を見開いた後、照れたようにニカッと笑った。



お線香を立てて、3人で手を合わせた。




食後、訓練の疲れも出たのだろう。

転がって居眠りを始めた悠仁。

ひざ掛けをかけてあげていると、五条さんが静かに声を発した。


「Aと僕は見ている世界が違うよね。価値観も違うし」

五条さんを見つめる。

確かにこの人と話してて「わ、価値観合う〜」なんて一度も思った事ない。

「何ですか、突然」

「僕にはこういう発想、浮かばないからさ」

五条さんは、私が作った仏壇を眺めながら呟いた。
そこでは、悠仁のおじいちゃんが笑っている。



「もうすぐ四十九日みたいなので。悠仁のおじいちゃんには、安心して極楽浄土に向かってほしいな」



聞いた五条さんも、笑った。

「やっぱりAにサポートお願いして良かったよ」

先輩との過ごし方 前編→←夏夜の幻想 後編

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す