夏夜の幻想【五条悟】

イケメン呪術師 後編 ページ39

「自分でも、こんな怒ると思わなかったよ」

そう笑う五条さんは、私が肩にかけてたバスタオルで、私の瞳を優しく拭ってくれた。

「ごめんね、僕が焦っただけ」

首を傾げる私に、苦笑する。

「さっきもこうやって、A怖がらせて泣かせちゃったし。難しいな」

五条さんは、ゆっくりため息を吐いた。

「仲直りしよう。A、来てくれる？」

彼が両手を広げた。
戸惑っていると、苦笑しながら、五条さんが言う。

「仲直りのハグ。ほら、おいで」

え、ハグ？
そんな欧米風なの？

思いつつ、ゆっくり近づいて五条さんを見上げると、先輩の両腕が優しく私を抱きとめた。

きゅんとする。
先輩の胸に顔を押し付ければ、すごく安心した。
恐る恐る、彼の背中に両手をまわす。

長身でスマートに見えるけど、こうして手をまわしてみれば、やっぱり男の人だ。
体は固くて、ガタイも私なんかより断然いい。

そう思うと、なんだか顔が熱くなる気がした。

「今日はもう帰るよ、サングラスありがと」

サングラスを手で弄びながら、五条さんが言う。

「あ、あとさ。風呂上がりなのは分かるけど、そーゆう格好、気をつけなよ」

「え？」

バスタオルを、私の胸元が隠れるようかけ直した。

「悠仁の前では、絶対ダメ。男子高校生には刺激が強いから。」

顔が真っ赤になる。
確かに、五条さんの身長から見ると、胸元なんか丸見えだったかもしれない。

お父さんみたいな説教をしてから、五条さんは帰って行った。









Aの家から帰りながら、僕は何度目か分からないため息をついた。

彼女に変な誤解をされたくなかった。
無視されたから、慌てて家におしかけてまで、釈明するつもりだったのに。

彼女に冷たくあしらわれた気がして、つい苛立ってしまった。

結果、泣かせた。

また、ため息をつく。

彼女じゃないか、とAに言われた事も、余計に苛立った原因の一つだった。

自分でも、軽薄で適当なところはあると思ってる。
でも、Aにはかなり優しくしていて、気持ちだってストレートに表現しているつもりだった。

正直、いい雰囲気だとも思ってた。
自分の好意も伝わっていると思っていたのに。

ここまでしていても、A以外の彼女がいるような男に見えていたのか。

そう思うと、つい焦ってしまった。

「難しいなぁ」

ボヤきながら、もう一度ため息をついた。

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