イケメン呪術師 中編 ページ38
恐る恐る覗き窓を見ると、いる。
五条さん。
「タイミング良すぎ·····」
動揺しつつ、ドアをゆっくり開け、隙間から覗いた。
「これですか?」
サングラスを差し出す私の格好に、先輩は目を見張っていたが、そうそう、と受け取ってくれた。
「じゃあ、お疲れさまでした」
さっさとドアを閉めようとすると。
がん、と長い足がドアの隙間に挟まれた。
大きな音に、思わず身体が震える。
ドアを押し開けて五条さんが入ってきた。
バタンと、大きな音でドアが閉まる。
五条さんの顔を見上げると、彼はにっこり笑った。
「冷たいじゃん。入れてよ、家。」
声はいつもみたいに軽いし、笑顔なのに、何故か背筋が冷える。
ものすごく、怒ってるように見える。
なんか、怖い。
「ごめんなさい·····何か怒ってます?」
「謝るような事したの?」
さっぱり心当たりがない。
だから怖い。
冷たく見下ろしながら言われると、余計に怖かった。
「さっき、何で無視したの」
無視?
見上げると、五条さんは目隠しを降ろしていた。
蒼い瞳が、冷たく見える。
公園で声をかけて来た時の事だろうか。
「あれは·····五条さん、綺麗な人と一緒だったから。彼女さんなら邪魔しちゃ悪いなと思って。」
「は?」
冷たいトーンに、びくっと肩が震えた。
「僕に彼女がいると思ったんだ。それで僕が声かけても無視したわけ?電話かけても切るしさ。」
やっぱり怖い。
思わず後退りする。
「A」
私を呼ぶ声も、冷たく感じた。
先輩の顔が、見れない。
先輩の手が伸びてきて、私の顔を触ろうとした瞬間。
思わず身をすくめて、俯いてしまった。
下を向いてると、近づいてきた手がゆっくりと遠ざかっていくのが見えた。
先輩が、首筋に手をあてながら、ゆっくり息を吐く。
「ごめん、怯えさせたかった訳じゃないんだ」
さっきよりは少し声色が優しい。
「変な誤解されたまんまじゃ嫌だったからさ」
頭をかきながら、先輩が言う。
「別にあの人は彼女でもなんでもないよ。ただの知り合い。彼女なんて、いないし」
「本当?」
思わず頭を上げれば、五条さんが苦笑していた。
「ほんとだって」
「好きな人、とかでもないんですか?」
「違う違う」
胸にじわじわと、暖かいものが広がっていく感じがした。
「誤解してごめんなさい。五条さんの事、こんなに怒らせちゃうなんて思わなくて·····。」
優しい言葉にほっとして気が緩んでしまうと、涙が溢れてきた。
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しゃっと(プロフ) - 猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )さん» いつもコメントありがとうございます(T_T)私が書くと、まわりくどくてあんま甘くない話になるんですが(--;)猫人形さんのコメントに私も癒されまくりました!!今の作品ものんびり更新でしたが・・・頑張る気がわいてきました!! (2021年4月18日 21時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - 完結!お疲れ様です〜柔らかい優しさと切なさを兼ね備えていてとても良かったです…忙しくて開けていなかったのですが最後まで読めて心満たされました、、ありがとうございます( ; ; ) (2021年4月18日 9時) (レス) id: d8d7cfe01e (このIDを非表示/違反報告)
猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - しゃっとさん» 前作の近くて遠い。も読ませて頂きました!そちらもまた良かったです..はい!更新楽しみに待っています^ - ^ (2021年2月15日 23時) (レス) id: d4943c1156 (このIDを非表示/違反報告)
しゃっと(プロフ) - 猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )さん» コメント嬉しいです…!ありがとうございます!季節外れなお話ですが頑張って書きますのでまた見にきてください^^ (2021年2月13日 23時) (レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
猫人形 元猫耳アヤツリ人形 (°∀° )(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです!言葉選びとか凄く好みです…! (2021年2月12日 0時) (レス) id: d4943c1156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃっと | 作成日時:2021年1月6日 18時