夏夜の幻想【五条悟】

ビアガーデン 一 ページ24

「A行こうよ、ビアガーデン。たまには、仕事の事も忘れて、ぱぁーっとさ」

朝から爽やかに挨拶されたかと思えば、突然、五条さんに飲みに誘われた。

「ビアガーデンて·····五条さん、飲めないじゃないですか」

思わず呆れてしまう私に、五条さんが口をとがらせながら反論する。

「飲めなくても行けるよ。飲み放題でソーダやアイスがあれば、自分でソーダフロート作れるんだよ？」

28歳のいい歳した大人が、何言ってるんだろう。

「それならファミレス行きましょうよ」

つっこむが、まぁまぁと軽く流される。

「じゃ、今日の夜ね！悠仁も伊地知に任せて、あ、七海も誘ってみよっか」

そうしよう、と一人で勝手に話を進めた挙句、私の返事も聞かずにどこかに行ってしまう。

「相変わらずマイペース·····」

彼の背中を見ながらため息をつく。
でも、誘われるのは嬉しい。
顔が緩んだ。





その夜3人で訪れたのは、お洒落なビアガーデン。
各所にテントがはられ、オレンジ色のライトが暖かく光る様は、グランピングみたいだ。

「すごいお洒落！テンション上がりますね！」

弾んで言えば、お店を選んでくれた五条さんが、にっと笑った。

「でしょでしょ。A、もっと褒めていいよ」

予約もしてくれていたおかげで陣取る事ができたテントの中、のんびりお酒を飲む。

こうやって気軽に飲むのも久しぶり。

すぐ隣に座る五条さんは、オフ使用のサングラスだ。


本当にこの人、顔いいなぁ。

この長身と体格で、この可愛すぎる顔。
ギャップが、やばい。


テントに下がったモロッコランプの色とりどりのガラスが、鮮やかで幻想的な光を零す中、彼に思わず見とれてしまった。






おかわりに、ビールをついでもらいに来たら、後ろから建人もやってきた。

2人でビールを待っていると、建人が声をかけてきた。

「A、何かあったんですか？」

「何かって、なに？」

きょとんとして問えば、建人が眼鏡をあげながら答える。

「五条さんが心配してましたよ。貴方が元気ないから気分転換に行こうって。」

貴方が話しやすいように同期の私も誘われたんでしょうけど、と付け加えた。


「·····そうだったんだ」

朝、やたら軽く声をかけてきたくせに。




「悠仁の事も可愛がってくれてさ。僕のごはんまでお世話してくれて嬉しいんだけど、程々にね。」

玄関先で、頭を撫でながら言ってくれた台詞が蘇る。



まだ、気にしてくれてたんだ。

胸が暖かくなった。

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