2年前のあの日6 ページ9
あれもそう、丁度数年前のこの日だった。
まだ高専の同級生だった時。
悟が良いモノあげるって優しく笑うから、当時から彼を特別に思ってた私の胸は高鳴った。
「目ぇ閉じてろよ」
そう言われて髪の毛を触られる感覚に、期待してたのに。
いいぞ、と言われて目を開けると頭から降ってくる虫の玩具。
髪の毛に色々、差し込まれていたらしい。
散々叫ぶ私に爆笑してる悟。
叫び疲れた後、一転して涙ながらにキレて悟に掴みかかる私を、傑や硝子が何とか取り成してくれた。
その後、3人でケーキでお祝いしてくれたのだけど。
「なぁ、お前まだ怒ってんの？」
2人で帰る道すがら、後ろから声をかけてきた悟をじろりと睨む。
「逆に聞くけど、怒らない人がいる？」
軽く息を吐いて、頭をかいた悟が聞く。
「髪の毛に玩具つけたぐらい、冗談に決まってんだろ。じゃあ、男にどんな風に祝われたら嬉しい訳？」
「イケメンに優しく髪の毛触ってもらって、綺麗なヘアアクセつけてもらって、告白されるのが嬉しい。」
悟の仕打ちに対して皮肉をこめるように言った。
「なんだ、じゃあ前半は割に合ってるじゃん。」
こいつ、本当に腹立つ。
「全っっ然ちがうから！！！」
言葉だと、ことごとく言い返される。
それならばと道端に落ちていた石を投げつけたけど、当然当たらない。
「何やってんの、馬鹿なの？」
冷静に返される程、腹が立つことはない。
「もう悟なんか知らない！」
怒りまくる私の後を、欠伸しながら悟はずっとついてきていた。
それが数年前。
あの時、甘く期待しただけに反動でかなり傷ついた私は、悟を2週間避け続けたんだった。
「綺麗でしょ？Aに似合うと思ってね」
鏡越しに、悟の顔が私に近付くのが見えた。
髪飾りに軽く口付ける。
そのまま、私の耳元に近付く。
あんな昔、売り言葉に買い言葉で言った台詞、覚えてくれていたんだろうか。
まさか。
「A、··········」
お祝いの言葉を呟いた後、悟は鏡を片付けて立ち上がる。
「資料ありがと。助かったよ。」
ドアを開けて彼が出ていってしまう。
私は呆然として髪飾りに触れたまま、動けない。
あの時の言葉、覚えてくれてたの？
イケメンに優しく髪を触ってもらって、綺麗なヘアアクセつけてもらって·····それで？
追いかけて、そう確かめたい。
でも、今の私にそんな資格はない。
「この髪で、他の男とデートか。狡いなぁ。」
夕日に照らされる中、私は暫く動けなかった。
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しゃっと(プロフ) - しぃぷさん» コメントありがとうございます！自己満だなぁと思いながら書いてたので、こんな褒めてもらえるなんて…！嬉しすぎます。ありがとうございます！また新しいお話もがんばるので、そちらにもぜひお越しください〜。 (2021年2月4日 23時) (
レス) id: 79cfbcfb05 (このIDを非表示/違反報告)
しぃぷ(プロフ) - いや、マジで天才かと思いました。めっちゃ好き過ぎる……話の構成も流れも最高です！！完結おめでとうございます！新作が出たら1番に応援しに行きますね！素敵な作品を有難う御座います！！ (2021年2月2日 13時) (レス) id: c3f6824249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゃっと | 作成日時：2020年12月5日 14時
