逆さまの宇宙。【ヒロアカ】 (ページ1)

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1.宇宙のワルツページ1

「恋って、さきの見えない宇宙みたいだね」

　あるとき彼女がそんなふうにぽつりと溢した。
　これまた急に、と洩れた言葉に彼女はこう続ける。

「だって、宇宙ってきらきら輝いているように見えて、実は真っ暗なんでしょう？最果てもなくて不安になるし、けれど吸い込まれるところは吸い込まれて不安定だもの」

　わたしはそんな宇宙のひとかたまりにはなりたくないな。なんて、メルヘンチックなことまで言い出した。

「Aはときどきおかしなことを言うね」
「そうかしら。わたしはただ、思ったことを口に出しただけよ」

　好きな音楽を聴いたり好きな絵画を観て溢れ出た感想と同じことよ。
　暗闇の中でくすっと羽のように軽く笑った彼女の頬に、じんわりと朝日が照らされる。ああ、もうそんな時間かとどこか他人事のように考えて軋むベッドから足を床につける。ひんやりとしたフローリングの感触に少し身震いした。
　視界に映るのは床に散乱している衣服と、使用済みのゴム。この生々しい状況が俺達の関係性を色濃く示していてたまらなかった。

「あら、もうこんな時間」

　遅れて身を起こした彼女が乱れた姿のままくあ、とあくびをした。何度もその姿を見ているのにまるで見てはいけない神聖なものを見てしまったようで苦しい。

「ホークス」
「ん？」
「また欲しい情報があったらいつでもおいでね」
「……ん」

　軽い返事をして拾った衣服を身に纏う。
　あとで香水かけなきゃな、なんて浮気でもしているような男の思考を廻して彼女に背を向けながら俯いた。