大人になる前に (ページ7)

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とりあえずAちゃんを連れて家に戻った。

冷蔵庫から2人分のペットボトルのお茶を出して
ソファにAちゃんと横並びに座った。

「落ち着いた？」

『うん、ありがとう。
私、ずっと迎えに来てくれるの待ってたのかもしれない』

Aちゃんは下を向いてまた泣きながら話した。

『聞いたら嫌いになると思うけど、私今家なくて、毎日違う人のところで泊まってる』

ずっと友達の少なかったAちゃんにそんなことができるのだろうか、と疑問に思ったけどAちゃんがまたすぐに口を開いた。

『お礼は身体でいいよって言ってくれる男の人のところ。』

『渋谷の人ってすごいんだよ、声掛けられて着いて行ったらご飯も泊まるところも全部出してくれるの。』

「なんでそんなこと…」

『高校生の時将明くん、私にどこ行くか聞いてたでしょ？あれ渋谷に来てたの。あの息苦しい家にいたくなくて、誰かからの愛が欲しくって、』

高校生の時は気づかなかったAちゃんの苦しい気持ち。自分が情けなくなった。

『一時的な愛でもいいから欲しかった。誰かに抱きしめて欲しかった。高校生にして毎晩違う知らない男の人と過ごしてた。おかしいよね、私。お母さんに虐待されてた訳でもいじわるされてた訳でもないのにどうしてあんな事始めちゃったんだろう。もうこれが癖になっちゃった。』

Aちゃんはお母さんとは特別仲が良いわけではなかったけど仲が悪そうには見えなかった。

事実、Aちゃんのお母さんはAちゃんのこと大切にしてた。でも愛情表現が足りてなかったみたい。

『最初はやっぱり怖かったけど今は何も思わない。生きるためにやってるって感じ。どんな人でも拒まなければ絶対毎日誰かのところにいけるの。』

あの時よりも強く見えて、でも本当は何倍も弱くなっているAちゃんの手を握った。

「もうそんなことしないで、俺が守るから」

『将明くんの負担になりたくないよ。私は大丈夫だから。』

「そのまま放っておく方が気がかりで負担だから。」

『変わらないね、将明くんは』