空 |gnzk ページ39
あれから、早2年。
未だ弦月の記憶が戻ることはない。
俺は仲間を守れなかった。…そして__も。
悔やんでも悔やみきれず日々苦しくて、きっと晴がいなかったら今頃俺は__。
そんなことを考えていると、ふと電話が鳴る。
「…え」
表示されたのは"弦月"の文字だった。
「…どした?」
「な、がお…長尾ぉっ…」
声は明らかに涙声。
「おいどうした!?!なんかあったのか!?」
「ううん、違う、違う…」
「__僕、思い出した」
衝撃のあまり何も声が出ない。
「…ごめん、こんなに大事にしてきた人を忘れるなんて」
「…こっちこそ、守れなくてごめん」
「今から、行ってもいいか?」
もちろん、という声が聞こえて電話を切る。震える手で晴に連絡を入れた。
「弦月ぃ!!!」
「ほんとに僕たちのこと思い出した…?」
病室についた瞬間に駆け寄る。大好きな、仲間の元へ。
「そうだよ、もう2人とも、泣かないでって」
俺が知っている弦月だ。
嬉しくて昔のことをたくさん話して笑い合った。
しかし、一瞬顔が陰ったのを見た。
それは晴もわかっていたようで、
「どしたの弦月、まだ元気ない?」
「…いや、ううん。その、Aちゃんは、来てくれないの、…?」
あたたかさでいっぱいだった部屋の気温が下がった気がした。
静かに首を振る。
「…ねぇ、どういうこと!?ねえ、はっきり言ってよ!!」
肩を揺さぶられるが閉じた口はきゅっと結んだまま。晴も俯いて、何も言えない。
「…ねえってば!!甲斐田はなんか知らないの!?」
「…ご、めん」
ごめん、と繰り返し謝るだけ。
「謝ってもわかんないよ…どうして黙るの?もう、会えないの…?」
悲痛な声は心に突き刺さる。だけど、でも、あいつは…Aは…
「ごめん、俺たちからはAについて何も言えない」
「は、」
だってあいつは、言ったんだ。
"今のわたしがそばにいたら藤士郎に迷惑をかけちゃう。ほら、無理に思い出させるようなことしちゃうかもしれないし。あとね、もういいですか?なんて言われちゃった…っ、もう彼には私は必要ないよ、だからさ、もう来ない"
"弦月藤士郎といた日々は宝物でずっと忘れません、って"
まあ伝わらないんだけどね、そう笑っていた。
あの笑顔はもう、見ることはできない。
ただ、それだけが事実。
_____
Aさんの生死はご想像にお任せします。
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お米(プロフ) - (°д°)ポカンさん» 遅くなりすみません!ありがとうございます!ちゃんと読めました!! (2022年10月26日 21時) (レス) @page3 id: 951a0df5c4 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - Hinaさん» 好きと言っていただけてとっても嬉しいです…!またリクエストありがとうございます!遅くなってしまうかもしれませんが書きますね! (2022年9月26日 19時) (レス) id: 2a01933ca8 (このIDを非表示/違反報告)
Hina - 凄く…好きです……あの、ほんとに出来たらでいいんですが、Chapter:4とChapter:5でysrさん、orb•ebnsさん、skngさんって出来ますかね……?(リクエスト多くて申し訳ない💦) (2022年9月22日 15時) (レス) id: 66b5211ad3 (このIDを非表示/違反報告)
(°д°)ポカン - お米さん» 作者さんではないんですけど…私は最初は822って打ってたんですけど読めなかったので0822と打ってみたら読めました。もしこれも試していたならすみません…。 (2022年8月17日 20時) (レス) @page45 id: 455b891510 (このIDを非表示/違反報告)
お米(プロフ) - とても読みやすくて気に入ってます!「真実は」の続編が見たく、privatterで作品に記載されている通りにパスワードを入れてみたのですがいろんな方法で何回試しても開けません。どうしたら見れますかね…? (2022年8月12日 22時) (レス) @page3 id: 951a0df5c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2021年11月23日 10時