空 |gnzk ページ38
それは朝のことだった。あまりにも突然で、信じがたくて。
長尾から連絡が来た時は、何も言えなかった。
"藤士郎が魔に襲われて今病院にいる"
溢れ出そうな涙を堪えて支度もしないで家を飛び出る。
藤士郎、お願い助かって…！
病院に着くと既に長尾と甲斐田がいた。
俺ら先に行ったけど、まだ起きてないんだ、と伝えられる。
それでも顔だけは見たいから病室へと向かう。
「…っ」
そこには静かに眠る藤士郎の姿。
所々包帯が巻かれているのを見て涙が溢れる。その雫は頬を伝って藤士郎の手に落ちる。
「…ん、？」
その言葉と共にゆっくりと目を開いた藤士郎。
「よ、かった…私ほんとに心配でっ」
だけどその目は虚ろで、戸惑っていて、瞳が揺れる。
そんな口から出たのは、
「…すみません、どなたですか？」
信じたくない言葉だった。
「…っ、Aだよ、？」
「…A、さん…？」
慣れない言葉を口にする様子。
「…ご、めん、なさい、分かんないです」
安堵感から出た涙が悲しみに変わる。
「ねえ、ねえ…！お願い、嘘だって言ってよ…」
彼の手に縋りつくように言う。
それでも、ごめんなさいという言葉しか出てこなくて。
何回も、何回も。これは夢だと言ってと。
嘘だよ、びっくりした？ごめんごめん驚かせちゃった、って言ってほしくて。
何回も嘘、嘘と言っていたら。
「…すみません、あの、もういいですか、」
僕も混乱しているので、と言われ突き放された気分になる。
「そ、うだよね…ごめん、なさい」
その言葉にハッとして我に帰る。
本当に忘れてしまったんだろうな、って。
誰か知りもしない人に急に嘘だよねってしつこく言われたらそりゃあ、ね。
…もう思い出してくれることなんてないのかもしれない。そう思うだけで涙が止まらなくて。かつて涙を拭ってくれた彼ももういなくて。
無言の病室に響く鼻を啜る音。
「…、無理に思い出さなくて、いいよ」
精一杯の笑顔を見せたつもり。辛い。苦しい。でも1番辛いのは藤士郎だから。
「…だから、最後に、ごめん」
そう言って抱きしめる。
もちろん抱きしめ返してくれることなんてない。
「…じゃ、さよなら」
そう告げて病室を後にする。
＿＿＿＿＿＿＿＿もう、彼の世界に存在してないならば。
＿＿＿＿＿＿＿＿
題名は「から」と読みます。
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お米(プロフ) - (°д°)ﾎﾟｶﾝさん» 遅くなりすみません！ありがとうございます！ちゃんと読めました！！ (2022年10月26日 21時) (
レス) @page3 id: 951a0df5c4 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - Hinaさん» 好きと言っていただけてとっても嬉しいです…！またリクエストありがとうございます！遅くなってしまうかもしれませんが書きますね！ (2022年9月26日 19時) (レス) id: 2a01933ca8 (このIDを非表示/違反報告)
Hina - 凄く…好きです……あの、ほんとに出来たらでいいんですが、Chapter:4とChapter:5でysrさん、orb•ebnsさん、skngさんって出来ますかね……？(リクエスト多くて申し訳ない💦) (2022年9月22日 15時) (レス) id: 66b5211ad3 (このIDを非表示/違反報告)
(°д°)ﾎﾟｶﾝ - お米さん» 作者さんではないんですけど…私は最初は822って打ってたんですけど読めなかったので0822と打ってみたら読めました。もしこれも試していたならすみません…。 (2022年8月17日 20時) (レス) @page45 id: 455b891510 (このIDを非表示/違反報告)
お米(プロフ) - とても読みやすくて気に入ってます！「真実は」の続編が見たく、privatterで作品に記載されている通りにパスワードを入れてみたのですがいろんな方法で何回試しても開けません。どうしたら見れますかね…？ (2022年8月12日 22時) (レス) @page3 id: 951a0df5c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：翡翠 | 作成日時：2021年11月23日 10時
