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何でもはぐれてしまったのは彼の部活の後輩さんらしい。見ていないと告げると、困ったな、と頭をかきながら、さほど困ったことでもないように呟いた。
この辺りを探していたのなら、もしかしたら日向くんを見ているかもしれない。勇気を出して、あの、と声をかけた。
「わ、私も、人探しを、していて……オレンジの髪の、身長が160センチほどの男の子、み、見ませんでしたか……？」
「んん？いや、見てないと思うけど」
「わ、分かりました。すいません」
「お互い迷子探してんの、大変だな」
彼は私が人見知りするタイプだと瞬時に分かったらしく、ゆっくり丁寧に話してくれる。なんて気遣いのできるいい人なんだ。怯えてしまった自分を叱りつけたかったが、それは今することではない。
ではこれで、と別れようとした私に、彼は慌てて言葉を続けた。
「この辺りの道分かんねえから、教えてくれると助かるんだけど！そっちの迷子探しも手伝うから！」
そう言われてしまっては断る理由はない。特に敵意もないらしいし、音駒の人なら最悪旅館に電話すればいいだけだ。
ということで、一緒に行動することになってしまった。
とりあえずその後輩さんの情報を聞くことにした。騒がしい、というか人が多いところは嫌いなようで、静かで落ち着ける場所にいるかもしれない、とのことだった。
しかし、この辺りは住宅街だから、落ち着ける場所なんてほとんどない。少しだけ目を閉じて脳内の地図を巡る。この辺りであるとすれば小さな公園だろうか。
「か、可能性がありそうなのは、こ、こちらです」
「わりーな。途中で携帯の電源落ちちまって」
「い、いえ……」
影山くんよりも大きい人なので、一歩が大きい。それに合わせる為に私はなるべく早足で歩く。あと早く日向くんを見つけてこの人と別れたかった。本当に親切にして頂いたのに申し訳ないが、やはり威圧感のある男性は苦手だった。
「そういえば」
「は、はいっ？」
「あー、いや、なんか君、見たことある気がして」
その言葉に心臓が跳ねる。まさか旅館にいたところを見られていた？
あの女将の娘がこいつ？という目線を散々受けていた私からしたら、あの旅館の娘だとバレるのは好ましくなかった。ドキドキしながら話題を逸らせるものはないか、と周りをぐるりと見渡した。
「あっ」
「あ！」
「あ、いた。研磨ー」
なんていいところに、日向くん。しかも彼の後輩さんも一緒だ。
ありがとう、助かりました。私は心の中で彼を褒めた。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年2月22日 21時
