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相手もそう簡単に譲ってはくれない。すぐに追いつかれ、次は問題の及川さんのサーブだ。ここであの強烈なサーブが襲ってくるなんて、こちらとしては最悪以外の何物でもない。
だけれど、ここで初めて及川さんがサーブミスをした。少しほっとしたが、すぐにエースさんが取り返す。フォローの速さが尋常ではない。しかもチーム全体がほとんど崩れない。
嶋田さんも「全国行ったことないって嘘じゃねーの？」と顔を引き攣らせていた。私も同じ気持ちだった。
一進一退が続き、選手たちの顔つきも少しずつ厳しくなっていく。ついに三十点を超えてしまい、息も絶え絶えといった感じだ。苦しさが伝わってくる。
ここでローテーションが一周。及川さんのサーブだ。先程のミスが効いていればいいけれど、恐らくそれは期待できない。彼は精神力が強いから、そんなことで怯みはしないだろう。
及川さんのサーブで崩される。チャンスボールだ。ここで余力のある国見くんに託すということか、と小さく唸った。これで青城が逆転だ。
ここで及川さんのサーブだが、散々強烈なサーブを見せておいてのフェイントだ。確実に点を取るための選択。余りにも冷静すぎる思考回路にドキッとしてしまう。
レシーブが乱されて速攻は使えない。上がったボールを東峰先輩が撃ち抜くが、なんとかリベロに拾われる。青城の攻撃もエースさんだ。
何とか上げたボールは相手のコートへ。ダイレクトで金田一くんに叩かれるが、西谷先輩がレシーブする。会場もどわっと盛り上がった。ここから誰に上げる、そう考えて、固まった。
そのタイミング、その疲労値、そのチャンスでボールを上げる相手。相手のブロックの位置。
「……待って」
駄目だ、彼に上げては。そんな声は届く訳もなく、ましてや届いたとしてももう遅かった。日向くんに託されたボールは、三枚の壁にブロックされる。カバーが間に合わずに、ボールは烏野のコートに落ちた。
ピーッと鳴る笛の音が、少し憎たらしかった。
整列してこちらに頭を下げる彼らを上から見下ろして、小さく口内の頬肉を噛んだ。何も言えなくなってしまって、その代わりに人生で一番大きな拍手をした。
選手達が帰ってくる前に、私も落ち着かなければ。悔しいのは彼らだし、心が痛いのも彼らなのだ。冷静に、彼らを出迎えるのが私の役目だ。それを忘れるな自分。
「……よしっ」
「……マネちゃんも、すげえなあ」
気合いを入れ直した私に、滝ノ上さんが小さく苦笑した。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年2月22日 21時
