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会場が日向くんを注目し始めた。心做しか伊達工の選手の方々もちらりと日向くんを目で追うことが増えた気がする。それが罠だとも知らずに、輝く光を見つめたまま。
「はやくはやく！」
「あっ！マネちゃんいる！」
「ふあっ！？」
コートを見つめていると後ろからバタバタと駆け寄ってくる集団がある。何故か私を認知されているみたいだったので怖かったけれど、しかし振り返ってみれば納得だった。道宮先輩と女子バレー部の方々だ。
「良かった男子の二回戦まだやってる！」
「あ、あの、お、お疲れ様です」
「こんにちは！お邪魔します！」
ぞろぞろと女子バレー部の皆さんがやってきて囲まれる。二階席で一人というのも中々恥ずかしくて緊張したけれど、こうやって知らない人達に囲まれるのも同じくらい緊張した。
しかし一緒に応援してくださる仲間というのは確かなので、深呼吸をして少し横に逸れる。凄い彼らをしっかり見て欲しいのだ。隣の階段からは同じように急いでOBの方々が降りてきて、結果的に私を挟むようにして落ち着いた。
「あっ」
日向くんの囮からの、東峰先輩のバックアタック。音駒がしていたパイプだ。練習していたのは知っているが、ここでぶち込んで来るとは。
強い音を立ててボールがコートに叩きつけられる。これでとりあえず手札は切った。これからどうしのげるかが問題になってくるだろう。日向くんへの「慣れ」もどのくらいで完成するかが分からない。
ただ日向くんが目立つほど、田中先輩や東峰先輩の攻撃が決まりやすくなるのも事実。このまま勢いに乗れるかが勝敗の分け目になるだろう。
東峰先輩のバックアタックで第一セットは終了。ただ七番さんが日向くんに釣られにくくなってきている。第二セットは更に接戦になりそうだ。
「マジで烏野が獲ったよ！」
凄い！とはしゃぐ女子バレー部の皆さんと騒ぐ会場。このまま頑張ってほしい、と少し力を入れて手を握った。
二セット目、ちらりと見るとローテーションを二つ回してのスタートみたいだ。恐らくあの七番さんと日向くんのマッチアップを避けるためだと思う。七番さん以外はまだ日向くんに「慣れて」いないと思うので、彼が前衛にいない間は神業速攻は通用する。
もし三セット目まで粘られれば、日向くんの囮は通用しなくなる可能性がある。最速で決着をつけたいところだ。彼らの勝利を信じて、頑張れと声に出した。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年2月22日 21時
