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第二回戦は午後一時。軽く食事をとって彼らはまたコートへ戻ることになる。また誰かに声をかけられるのではと冷や冷やしながら観客席へと戻ると、青城の時と同じようにバッタリと人と遭遇する。
ただそれは金田一くんでは無かった。
「あ」
「あ……す、すいません」
ぶつかりそうになった相手は、金田一くんの隣によくいた黒髪でセンター分けの彼。中学時代は北川第一にいた、あの拒絶の渦中にいた一人だった。
パッと弾かれたように距離をとる私に、彼は気まずそうな顔をしながら「こちらこそ」と言った。話したことも声を聞いたことも無かったけれど、案外礼儀正しい人なのかもしれなかった。少し冷静さを取り戻す。
「あー……あのさ」
「はっ、はい」
声が裏返りそうになるのを必死で抑えて、何とか返事をする。私を上からすっと見下ろして彼は続ける。私の挙動は特に気にならないらしい。
「携帯ある？」
「あ、あります、けれど……」
「番号、交換して」
「へっ！？」
何故急に。何の接点も無いだろうに……いや、中学が同じということと、影山くんを知っているという接点はある。ただ不思議でならない。どうして今？
首を傾げたまま俯いてしまった私に、彼は至って自然に口を開いた。
「交換しておいた方が、後々役立ちそうだから」
「は、はあ……、す、少し、待って頂けますか」
ポケットから持ち歩いている手帳を出し、その上にさらさらと自分の電話番号とメールアドレスを書く。それをピッと切り取って折りたたみ、ぽかんとしている彼に手渡す。ピシッと綺麗に切り取れて少し満足感。
「き、金田一くんに、お渡しください……。そ、その後は、彼の判断に任せ、ます」
「……ふうん。用心深いって感じ？」
「む、無闇に、拡散されても、こ、困りますから……勿論、彼はそんな事をしないと知っていますが……このようにさせてもらいます」
もう一度ふうん、と相槌をうって、彼はするりと柔らかにその紙を取った。
「金田一はいいんだ？」
「はい」
「……俺の負け。渡しとく」
やれやれとかぶりを振って彼は微笑んだ。柔らかくてふんわりとした綺麗な笑顔だ。私も少しだけ力が抜けた。
その後特に何を言うこともなく、彼は私に手を振って仲間の元へ戻って行ったようだった。私もそれに会釈して、今度こそ二階席へ上がる。
「…………」
何だか今日は意図しないことばかりおこる。私のこの不運がこの後の試合に適用されないのを願うばかりだ。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年2月22日 21時
