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その後の事は良く覚えていない。というのも、泣き疲れたのかうとうととしてしまって、ほとんど記憶が無いのだ。合宿所で寝ぼけて変なことをしていないかだけが心配だった。
永原さんに揺すられて起きると既に旅館に付いていて、寝ぼけた私を抱えて戻った永原さんは、誰に会うことも無く私の自室へ私を投げ入れた。
「説明はつけとく。明日もあんだろ、さっさと寝ろ」
フン、と鼻を鳴らして彼が私の部屋を出ていくのを最後に視界に入れて、私はいとも簡単に眠りについた。あんなことがあったのにスッと眠りにつけるなんて思っていなかったけれど、烏野効果がそれを可能にしたらしかった。本当に感謝しかない。
「い、行ってきます」
「はい！行ってらっしゃい、お嬢様！」
翌朝、笑顔の夏目さんに見送られて私は合宿所へと向かう。朝は迎えに来てもらう訳にもいかないので、夏目さんか永原さんに送ってもらうことにしたのだ。
彼らも彼らでお仕事があるので出発は少し早い。だけれどここで私が断って、更に事件に巻き込まれたらそれこそ目も当てられない。大人しく私は頷いた。流石にもうあんな目に会いたくはなかった。
「お、お邪魔します……」
「ん！？おはようございます、神風さん！大丈夫ですか！？」
「あっ、お、おはようございます、先生……。大丈夫、です」
合宿所に入るなり、食堂にいた先生がパタパタと走ってくる。朝ごはんの準備中らしく、エプロンを付けていた。こんな朝早くからお仕事をしていて尊敬した。旅館だから早起きしている私とは訳が違うだろうに、やっぱり努力家で素敵な人だ。
「無理はしないで下さいね。何かあれば、誰かに声をかけるようにしてください」
もう他の皆さんから話は聞いているらしかった。心配そうに私を見る先生に頷いた。本当に皆さんは私に優しくしてくださる。私もそれに報いるようにサポートしよう、と少し元気が出た。
「それにしても早いですね！まだ練習も始まってないですよ」
「あ、朝ごはんのお手伝いをしようと、思って……早く出た方が、私も安心しますし……」
「助かります！って、あっ、火！」
わたわたと先生は中へと戻っていく。私もそれを見て中へと入ろうとすると、外から声がかけられる。少し驚いたけれど、いつも聞いている声だからすぐに振り向けた。
「おはよう」
「はよ」
「今先生がご飯の支度してくれてるよ」
「！」
顔がパッと明るくなる影山くんを見て、相変わらずだなあ、と私は微笑んだ。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年2月22日 21時
