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「月島くんがふったのに、どうして照れたの……、照れないで受け流してほしかったのに……」
「照れてないけど」
「私の目を見て言って、ほら」

すっと逸らされた目にため息を着く。あの激励で良かったのかは分からなかったが、無事に彼らの士気を下げずに済んだようだった。その後私への対応がなんだかよそよそしかったが、問題はこの人にある。

「そもそも、私の応援は必要ないでしょう……潔子先輩の応援で、最高潮に士気が上がったんだから」
「……嫌がらせ」
「私に嫌味が通じないからって、こういうやり方をするのはやめて……」

落ち込みモードだからか、いつもよりするりと言葉が出てくる。この人が元凶だというのもあるけれど、案外月島くんは話しやすい子なのだ。本人に言うと何で?という顔をされるけれど。

というか月島くんは優しいのだ。多分先程も潔子先輩に選手の士気上げを担当させて、陰に隠れようとしていた私を表舞台に引っ張りあげたのだと思う。やり方は強引だけれど、嫌いになれない。

「……月島くんは、アスリートに応援はいらないって言いそう」
「はあ?」
「応援は力になるって言うけれど、人によってはうるさい歓声でしかないから集中力が落ちる、という話だよ。月島くんは応援なんて邪魔だって言いそうだな、って」

もちろんこんなものの正解なんて「人によって変わる」なので論ずるだけ無駄なのだが、いつでも冷静な彼を見るとふと思い出してしまったのだ。

雑談にしては重めの内容かもしれないが、彼ならすぐ理解出来るだろう。その予想通り、彼は私を上から見下ろした。

「場合によるとしか言えないね」
「私もそう思うよ。だからいらないかなって」

彼は賑やかになってきた後ろを振り返る。山口くんがこちらに手を振った。私はそれに小さく振り返す。ふっと校門近くの電灯が点滅した。

「君のは」
「うん?」
「君のあれは、必要だったんじゃないの」

月島くんはそれだけ言ってふいっと前を向いた。逃げ出すように足が前に出たので、急いで服の裾を捕まえる。

「何」
「……ありがとう。やっぱり、優しいのね」
「はあ?なんの事か分かんないんだけど」
「誤魔化すなら、それでもいいよ」

手を離すと、なんなの、と言いたげに私を振り返った。その金髪が電灯に照らされて星のようだった。苗字にあやかって月のように、と例えた方が良かっただろうが、月よりも星に見えた。

「ツッキー、何の話してたの?」
「……難しい話」
「え?」

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作者名:ReG | 作成日時:2022年2月22日 21時

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