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弥生ちゃんの仲介により騒ぎは収まったが、授業の後の休み時間になるなり、誰かしらが私に話しかけてくる。わたわたする私に弥生ちゃんがさらりと助け舟を出してくれて、それがお昼まで続いた。

お昼はいつも通り弥生ちゃんはパンを買いに行く。その間にも私はクラスの子に囲まれるのだ。ゴメン、と手を合わせていつもより早く走っていく背中に気をつけてね、と声をかけた。

弥生ちゃんに頼りきりだから、ここで私も少しはコミュニケーションを取ろう、と気合いを入れ直す。私の悪い所を治すときがきたのだ。前向きに考えることにしないと緊張で口が回らなくなりそうだったので、言い聞かせる。

「神風さん、超可愛いじゃん」
「反応も小動物みたいだしねー」
「そ、そんなことは……、佐々木さんも、いつもメイクしてて、凄いですし」
「えっ、ガチ薄くしかしてないのに気づいたの?すご!」

しかし意外と話してみると、クラスメイトの方々はいい人達ばかりだった。私が言葉を詰まらせてもきちんと待ってくれるし、嫌な顔をしない。あんなに怖がっていたのが馬鹿みたいだった。

弥生ちゃんが息を切らして帰ってくると、私をぽかんと見た。それからへにゃりと笑って、「僕も混ぜてよ」とスムーズに私の前に座った。弥生ちゃんは基本人付き合いが上手なので、クラスメイトとは全然話せる子なのだ。

「ね、ありがと」
「え?」

そんなイレギュラーなお昼休みが終わる頃、こそりと弥生ちゃんは私に耳打ちした。なんの事か分からず首を捻ると、

「前の席、空けておいてくれたでしょ?原田とか、座りそーだったんじゃない?」

と笑顔で私を見る。そのことか、と頷くと同時に、やはり彼女の観察眼は素晴らしいと感心した。

「うん。でも、私の前は、弥生ちゃんの場所だから」
「……もお、大好きー!」
「ひいっ!?きゅ、急に抱きつかないで」

そんな感じで午後も始まったのだが、休み時間になると、何故か他のクラスの子までもが四組に来て私を一目見ていくようになった。解せない、どうしてだ。

きゃあきゃあと女子達から可愛いと褒められるので、もう今日が一番可愛いと言われる日だな、と顔を赤くしながら思った。こうやって容姿で褒められるのは慣れていない。恥ずかしくて仕方なかった。

なのでSHRの終わりを告げるチャイムが鳴るなり、私は鞄を抱えて飛び出した。弥生ちゃんはいつも通りのんびりと「じゃあねー」と私に声をかけたので、短く「うん」とだけ返した。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年2月22日 21時

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