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まずい、と私は廊下を早歩きで進む。
皆さんの士気も高まっている大事な時なのに、先生のお手伝いを任されてしまって遅れてしまうなんて。
断れない私も悪いので仕方ないけれど、今私に任せなくてもいいじゃないか、と小さな悪態を心の中でつきながら階段を降りる。客観的に見ても、先生は私を過信しすぎだし、頼りすぎだ。今度は絶対に断るぞ、と心に決める。
教室を出る前に月島くんに「言っておいてね」と言ったので、遅れることは伝わっているだろうけれど、こんなに遅くなるなんて予想外だった。もう部活自体やっているか怪しい時間帯だ。
もう着替えている時間なんてない。仕方ないのでこのまま体育館に乗り込もう。お仕事は出来なくても謝罪はしたかった。
「あっ、た、武田先生っ」
「あ!神風さんっお疲れ様です!間宮先生のお手伝いは!?」
「さ、先程、ようやく……!」
武田先生も職員会議が長引いたようだった。慌てて職員室から出てきて走る。先生が走るならそれに乗ってしまおう。ごめんなさい、少しだけ悪い子になります。私も同じようにして走った。
「お、遅れましたっ……!」
「皆まだ居るー!?」
武田先生と同時に体育館の扉を開ける。びくりと肩を跳ねさせて皆さんはこちらを振り返った。私たちは息を整えながら中へと入る。体育館用の靴が少し踵に引っかかった。
「遅くなってゴメン!会議が長引いちゃって……、それで、出ました!IH予選の組み合わせ!」
だから急いでいたのか、と今更ながらに気づく。皆さんもわらわらと集まって先生が握っていた紙に目をやる。先生はそれを澤村先輩に渡して、改めて息を整えた。
一回戦は常波、二回戦は勝ち上がってくれば烏養コーチが仰っていた四強、伊達工と当たる。しかも、シードにいるのは青葉城西。順調に勝ち上がれば四強のうちの二校と当たる、激戦となる。
とにかく厳しい戦いになりそうだった。ちらりと彼らの顔を見て、心配は要らなさそうだな、と安心する。
「目の前の一戦、絶対に取ります」
誰も彼もが目に闘志を燃やしている。良かった、とほっとすると自分に目が向けられているのが分かる。私は慌てて皆さんに頭を下げた。
「お、遅れてすいませんでした」
「大丈夫だぞ。また先生の手伝いか?」
「先生の手伝い!?優等生はちげえな……」
「い、いや、あの、凄いことでは……、採点とプリントの印刷くらいで、遅れてしまいましたし……」
「でも三クラス分なんだろ?よくやるわ」
「てか先生がやれよ」
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作者名:ReG | 作成日時:2022年2月22日 21時