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「な、なんとか……?」
「お、終わりましたー!ありがとうございますお嬢〜!」
「よ、良かった……」
「じゃあお送りしますね、超特急で!」
「い、いえ、安全運転で、お願いします」

バタバタとしながら入荷ミスを帳消しにする。とは言うものの、やっぱり入荷の量はいつもより多いし、倉庫もいつもより散らかっている気がする。ただ誤差と言える程度には被害を抑えられた。

いつもの入荷先の人が機転を利かせてくれたようで、野菜の量を調節して下さっていたのだ。本当に頭が上がらない。お得意様は大事にするものだな、と思った。

既に体力をかなり奪われてしまったが、休んでいる暇はない。もう時間は八時半を回ってしまっている。ここからであればそう時間はかからないけれど、とにかく私が彼らのお荷物になる訳にはいかない。

車に飛び込んで夏目さんに送ってもらう。夏目さんは不安そうな私を見たからか、色んな雑談をしてくださった。攻めた髪色と違って、穏やかで気遣いが丁寧な人なのだ。

「おっ、つきましたよ」
「ありがとうございます、行ってきますっ」
「走って怪我しないでくださいね、お嬢!」

車が完全に止まってからすぐ助手席の扉を開ける私に、夏目さんは少し笑いながらそう言った。私は後ろに向かって「はいっ」と返事をして走る。現在時刻は八時四十五分。ギリギリだ。もう音駒の方々と合流してしまっているかもしれない。

しかし走ってすぐに、目の前に黒い背中が見えた。そのうちの一人がふっと私を振り向いたので、私もその背に追いつくように足を動かした。

「神風さん!」
「おっ?来たか!?」
「お、遅れました、すいませんっ」

武田先生は息を切らす私に大丈夫ですよ、とにこやかに告げた。ふわっとラベンダーの香りがして私の心を落ち着けるのに役立ったが、どうやらコーチからするらしい。

息を整える私にコーチが「息整えな」と促してくれた。私は頷いて深呼吸をする。何だかいつもより早く呼吸が安定した気がする。

「と、ところで、この、ラベンダーの香りは……」
「……やっぱ、無香料だな……」

煙草の匂いを消そうとして消臭剤を使用したらしいのだが、どうやら過度に使用したらしかった。くそ、とコーチはぐっと眉を寄せた。可愛らしい面もあるのだな、と少しだけ身近に感じられた。

「整列!」

前方から澤村先輩のキリッとした声が聞こえてきた。どうしたらいいんだ、と慌てる私に、武田先生はにこやかに隣に手を差し伸べた。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年2月22日 21時

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