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案外マネージャーというのはやる事が多かった。選手たちが使うタオルやドリンクの準備をせっせと続ける。先輩は三年生でこの作業にもう慣れていたから、目分量でスポーツドリンクの粉末を入れていた。プロのような手つきに感動していると、彼女は照れたようにはにかんだ。

そして何より、運動をほぼしない私に一番キツかったことは、そのドリンクを持って水場から体育館へ戻ることだった。自慢ではないが私は非力である。家でも手伝うことは力仕事ではなく、厨房での調理やお客様の案内などばかりだ。

そんな私がひょいと持てるわけがなく、ひいひい言いながら運ぶ羽目になった。とは言っても、清水先輩は三分の二をもってくれている。私が三分の一も持てないのが悪いのである。

清水先輩はお優しいので、そんな私を見て私の分も持ってくれようとしたのだが、私が断った。ここまでやって先輩に全て任せるなんて出来ない。意地で運ばせてもらった。先輩は運び終わった後に肩で息をする私に「ありがとう」と言ってくれて、それが唯一の救いだった。

「はぁ、はぅ……、わ、私、ご迷惑おかけ、してますよね、すいませ、ん」

息も途切れ途切れになるが、何とか姿勢を正してきちんと呼吸を整える。

「……ううん、一生懸命手伝ってくれたの、嬉しかった。大丈夫だよ」

なんとも優しい人だ。神々しい笑顔と共に彼女は私にそう言ってくれた。「はうあっ」と悲鳴も聞こえた。この笑顔にやられたのは私だけでは無かったらしい。

悲鳴が、聞こえた?

「ひえっ」
「田中!馬鹿帰ってこい!」

目の前の体育館の扉が開いていて、そこから坊主頭の人がこちらを見て鼻血を出していた。恐らく悲鳴はこの人だろうが、鼻血が出ているのが恐怖心を刺激した。おもわず一歩下がると、先輩と思わしき人がぐいっとその首根っこを捕まえて扉の奥へ引きずり込んでいった。

「……ごめんね、害はそんなにないから」
「えっ、あっ、いえ、大丈夫、です」

そろそろ私の呼吸も収まってきた。これから少しは運動しようかな、と思いながら下に置いたドリンクを持ち上げる。この距離なら息切れはしない。

「澤村」
「お、清水。と、さっきの……名前聞いてなかったな」
「はっ、はい、一年四組、神風と申します」

向けられた目に急いで名前を告げると、あれ?と不思議そうな声が横から聞こえた。思わず振り返ると、見た事のある顔が体育館の横にいた。というか、端的に言えば、クラスメイトだった。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時

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