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今日から入部開始、という事で、改めて弥生ちゃんに部活が決まったかを確認した。彼女は迷った挙句、軽音部に所属することにしたらしい。
「吹奏楽はもう触ったし、そこそこ出来てたからねー。今度はベース触ってみたくてさ。系統が全然違うから苦戦しそうで、楽しそーじゃん？」
彼女らしい動機だった。またかっこいいチョイスだな、と思ったのでふんわりとそう伝えたら、
「僕、かっこいいの好きだからね」
と、にんまり笑った。「良く似合うと思う」と告げると、彼女は少しだけ照れたように私から目を逸らした。直球で褒められたりすると、照れくさくなってしまうようだった。
放課後、彼女は私の前にわざわざ来て、「じゃあね！」と手を振ってから背中を見せた。私も少し大きな声で「またね」と返した。少し注目が集まって恥ずかしかったけれど、こちらを振り向いた彼女が満足気に笑っていたので、もう何でもいいやと振り切った。
ジャージが入った鞄を背負う。私もこれから部活へ行かなければいけない。どこかの部活に入るのは初めてだったので、ドクドクと心臓が飛び跳ねるほどうるさかった。
「あっ、し、清水先輩っ」
先日清水先輩に案内された女子更衣室の方まで歩くと、なんと丁度先輩がドアを開けるところだった。私が慌てて挨拶をすると、彼女は驚いたように振り返って、私を視界に入れた後に笑った。今日も綺麗だ。
「お疲れ様。今日からだね」
「は、はいっ」
「緊張してる？」
「な、情けないですが、してます」
彼女は更衣室の中に入ってドアを抑えていてくれるので、私も慌てて中へ入った。甘い清涼剤の香りがして、いかにも女性が使っているような雰囲気がした。
私が正直に答えると、清水先輩は「最初はそうだよ」と微笑んだ。緊張を和らげようと努力してくれているのがすぐに分かって、申し訳なくなった。私がこんなに緊張しいなのが悪いのに、先輩にご迷惑をおかけする訳にはいかない。気合いを入れ直した。
「でも、大丈夫。何かあっても、Aちゃんのこと、守るよ」
「へっ、は、はい、ありがとうございます……！」
なんて頼もしい言葉なんだろうか。彼女は本当に優しかった。そんな先輩がここまで言ってくれるのだから、緊張はしたとしても、クラスでの自己紹介と同じようなヘマはしてはならない。
着替え終わって、清水先輩と一緒に体育館へ行く。一度会ったこともある先輩の方が多いはずだ。大丈夫。
自己暗示をしながら体育館用の靴を取り出した。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年1月26日 4時
