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ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人をなんとか抑えて、「基本一緒に登下校をしている」ときちんと伝えると、日向くんは納得したように頷いた。影山くんはめんどくさい、と言わんばかりに知らん顔だ。
「日向くんは、どこか寄った帰り？」
「そう！腹減って家まで持たなさそーだったから！」
「影山くんもだけれど、本当によく食べるよね、男の子って……」
自転車を押して歩いてきたらしい。流石に食べながら乗るのは危険だと分かっているらしかった。
「てか、影山！明日は負けねえからな！」
ビシッと指を指して日向くんは宣言する。なんの事か分からなかったが、大体の予想はつく。朝に体育館までのレースをしていたから、恐らくそのことだろう。
「は？明日も負かしてやるよ」
ずん、と上から圧をかけるように彼は見下ろした。日向くんはそれに一歩後ずさる。まだ彼のこの表情に慣れていないらしかった。ただ、彼はコミュニケーション能力がとてつもなく高いので、これにもすぐに慣れるだろうな、と思った。
「じゃ、じゃあ、日向くん、気をつけて帰ってね」
「あ！そうだった！また明日！」
しばらく話していたが、さすがに帰らなければいけない。申し訳ないながらも会話を切り上げると、日向くんはさっぱりとそう言って自転車に跨った。そのまま凄いスピードで去っていくので、こちらがぽかんとしてしまう。
「……朝も思ったけれど、体力、あるね」
「……負けねえ」
ポツリと呟くと、隣にいる影山くんがメラメラと闘志を燃やし始めた。案外いいライバルなのでは、と思ったが、彼等は明後日一緒に戦う仲間だった。
「帰ろうか」
自転車が走り去って行った方向を見たままの彼は、その言葉でこちらを向いた。少し楽しそうな目をしていて、微笑ましくなる。
日向くんは確実に彼に変化をもたらしていた。計算してやっているものではないから、尚更彼は心惹かれるようだった。それが私も嬉しかった。
「……明日は、影山くんのこと、私が迎えに行くね」
「は？いい、待ってろ」
「私が練習見たいだけなのだけど……駄目？」
「……好きにしろ」
「ありがとう」
彼はぶっきらぼうに答えた。私がバレーに興味を持つのが嬉しいらしく、何かと理由をつけると練習を見せてくれたりする。世間ではこれを「チョロい」と言う。
素直で子供らしくて可愛いけれど、逆手に取られたらかなりの弱点だ。ないとは思うけれど、試合の中で挑発されたら冷静になれないんじゃなかろうか。少し心配だった。
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作者名：ReG | 作成日時：2022年1月26日 4時
