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夕方と夜の間、綺麗なグラデーションがかかると、弥生ちゃんが眠そうに欠伸をした。「構って」と言った彼女だったが、本当に気まぐれで、私が話しかけると、

「えーA勉強はー?集中しなよお」

と、からからと笑うし、かといって本当に集中して問題を解いていれば、

「……ねえ、難しいよ、これ。飽きたー!構って、構ってー」

と、拗ねたように机に頬を乗せて上目遣いをお見舞いしてくる。本当に猫みたいで少し面白かったし可愛かったのだが、同時に扱いづらくもあった。どうしろと言うのだ、と言いそうになったが、彼女が話題を振ってくれることの方が多いので、文句は言わないことにした。そもそも私と会話をしてくれること自体が有難いのだから。

幸い彼女はまだ私が上げたお饅頭を食べていなかったので、「感想聞かせてくれると嬉しいな」と誘導して話題を作ったりした。彼女が機嫌をパッと良くしたので、定期的に何か作ってあげてもいいかもしれない。今度は洋風で。

「……あ、弥生ちゃん、帰り、大丈夫?」

案外外は暗くなってきている。身長が高いとはいえ、彼女も立派な女の子だ。夜道を一人で歩くのは危険だろう。

「ん?僕の家、歩いて五分くらいだよ?」
「えっ、そうなの?近いんだね」
「そうそう。だから余裕だよー。むしろAの方が心配」
「あ、私は、一緒に帰ってくれる人がいるから……」

心配そうに顔をのぞき込まれたので、慌てて手を振る。すると、彼女はにやりと表情を変えた。コロコロと情緒が変わるので、やっぱり不思議な子だ。

「何?彼氏?」
「ううん、中学からのお友達」
「なーんだ、つまんないの」
「面白い話題の提供が出来なくてごめんね……」

そんな訳で、すっかり暗くなった空を教室から眺めて、その後に時計を見る。丁度いい時間だった。私達はどちらからともなく帰りの支度をして、同時に教室を出て電気を消した。

弥生ちゃんも足が長いので、一歩が大きい。それを私に合わせるようにゆっくりと歩いてくれた。さりげない優しさが嬉しい。ありがとう、と言うと、何が?と嬉しそうにした。

「弥生ちゃん、一人で本当に大丈夫?」
「大丈夫だってばー、歩いて五分だよ?つまり走れば二分弱」
「一体それはどういう計算なの?」
「感覚だよ感覚。じゃ、また明日ー」
「うん、気をつけて」

玄関で手を振ってお別れをする。今日は玄関まで彼が迎えに来てくれる手筈になっている。甘えてばかりだな、と思いながら靴の中の小石を取り出した。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時

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