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その後始まった朝練では、私が入部前なのに体育館にいたことにびっくりされ続けた。皆さんが来る前にいた一人に引き止められたんです、とは口が裂けても言えなかったので、曖昧に誤魔化しておいた。

菅原先輩達も私に合わせて誤魔化すように、

「朝偶然会って、せっかくだから見ていったらって誘ったんだよ!」
「そ、そう!俺のスパイクとか、見せてやりましたよ!」

と、話を合わせろ、と私にウインクを飛ばしてきていたので、さらりと私も嘘をついた。嘘は本当に嫌いだったが、奇しくも私の得意な事ではあった。

「はい。凄くスパイクが強くて、びっくりしました」

彼のスパイクは昨日見学した時に見たことだったが、私は清水先輩をせっせと手伝っていたので、皆さんにはどうやら初見だと思って貰えたようだった。ボールをぶつけられていないかなど、一頻り心配された後にようやく解放して頂けた。

思いの外私が平然と嘘をついたからか、「結構やり手だったりする?」と菅原先輩に耳打ちで言われてしまった。私はもちろんそんなことはないと否定した。私は案外不器用だ。

入部前にあまり入り浸ってはいけないだろうと思ったので、勉強をするという理由ですぐに体育館を去ることにした。菅原先輩に小さく手を振られたので、小さく会釈をして教室へと足を進めた。

「あ、おはよー」

ガラリと扉を開けると、いつものようにがらんとした教室が目に入ったが、それと同時に後ろから声をかけられる。少し驚いたが、それは知っている間延びした声だったので、ゆっくり振り向いた。

「や、弥生ちゃん、おはよう」
「ほんと早いねえ、尊敬しちゃう……僕は眠くて仕方ないよお」
「弥生ちゃんは、いつも遅く寝ているからじゃないの……?」

確か彼女が寝る時間は深夜の二時だと言っていた。そんな人が朝七時前に学校に来るなんて、どう考えても睡眠時間は足りていない。早めに寝て生活リズムを整えて欲しいところだった。

「無理無理、僕ゲームしたいし」
「そんな深夜じゃないと、ゲーム、出来ないの?」
「ヒントあげよっか?」
「ううん、予想は付いているから、いいよ」
「ひひ、残念」

彼女の口ぶりからすると、大方彼女のお父様がゲームを禁止しているのだろう。進学クラスでないと高校への入学を許さないくらいだから、簡単に予想出来た。

「で、どう?」
「何が?」
「すっきりした?」

彼女のその台詞は、勿論、昨日相談したことだった。
私は微笑んで、しっかりと頷いた。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時

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