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「……神風さんは、影山のこと知ってるの?」
「えっ?あっ、はい、お友達、です」
「え!?影山が!?それは、また、意外だな」
「よく言われます……」
菅原先輩が心から驚いたように私を振り返る。元からまん丸としていた目が、ぎょっと開いて私を見ていた。もう慣れっこの反応なので、するりと返答出来た。初めてつっかえずに言えたかもしれない。
「全然影山にビビってないからそうかもと思ったけど、そうかあ……小学生から?」
「あ、いえ、中学二年の頃からです」
「また凄い時期に知り合ったね……じゃあ二年くらいか」
「……前まで日向くんが拾えなかった玉を、今日は拾われているから、影山くん、ちょっと焦ってますね」
そう言うと、パンと上へボールが跳ね上がった。またボールが影山くんの元へと帰る。それを菅原先輩も私の隣で見ていた。
「……そっか、一応あいつも見てるんだな」
「彼の視野は、広いですから」
勉強のこと以外は、と脳内で補完した。わざわざここで言う必要は無かった。
「……ん?」
と、ガラリと体育館の扉が開いた。私はまたびくりと肩をはね上げて扉の方を振り返った。そこに居たのは田中先輩で、私よりも先に二人のラリーに気を取られたようだった。
ただすぐに私に照準が合わせられた。お!と明るい声が彼から放たれた。
「昨日の、マネージャー希望の女子!」
「は、はいっ、神風ですっ」
「おいビビらせんなよ」
菅原先輩が軽く注意してくださるが、完全にこれは私のコミュニケーション能力が低いのが悪い。逆に田中先輩に申し訳なくなって頭を下げた。田中先輩は「いいって、俺もスマン」と、笑って私の頭を上げさせる。目つきは悪くても、優しげな人だなと思った。
先輩は私がいることに首を傾げつつも、靴を履き替えて菅原先輩の隣へ立つ。こうして見ると私との身長差は割とあった。私が靴を履いていないこともあるかもしれない。足が凍りそうだった。
「え……コレどんくらいやってんすか」
「俺が来てからは十五分経ってる。神風さんの話によると大体十八分くらいかな」
「連続スか?」
菅原先輩が頷くと、マジかよ、というように「ゲッ」と声が漏れた。それはそうだと思う。私もまだ信じられない気持ちでいっぱいだ。ただ、それが事実だ。
だからこそ、彼が少し怖いのだった。
そんな私の考えを吹き飛ばすように、日向くんは叫んだ。
「まだっボール落ちてないっ!」
息を切らして必死に言うその言葉に、何故か胸がドクリと跳ねた。
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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時