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「おはよう」
「はよ」
「朝ごはんは大丈夫?」
「動くし、いい。後で食う」
「そう」

朝四時半。約束ぴったりの時間に彼は来た。彼が意識してこんなきちんと時間を守るはずはないので、恐らく偶然だと思う。

小さな会話をいくつかしながら、揃って学校へと歩いた。相変わらず人気がなく静かな道だったが、退屈はしない。そもそも彼といて退屈したことなど、今の一度も無かった。

「げ!」
「え?」
「あ゛?」

校門に差し掛かると、後ろから自転車の音と嫌そうな声が聞こえてきた。振り返ると、予想通り日向くんが自転車に乗ったまま、鬼の形相で迫ってきていた。慌てて道の端に寄るが、影山くんは対抗して走り出した。相変わらず元気だ。

「は、はや……」

風の音が聞こえてきそうな速さで彼らが過ぎ去っていった。私もそれに習って走り出す。特に対抗心等は無いのだが、そうしたらちょっとだけ彼らの気持ちが分かるかもという楽観的な思考だった。

軽く走るだけで息が乱れてしまうのだから、毎日この距離だけでも軽く走ることで体力がつかないかな、と思ったのも事実である。そんな簡単につかないとは分かってはいるけれど、やることに意味があると思った。

体育館へつく頃にはとっくに息は乱れていたが、中でいがみ合っていた彼らを見て、息をきちんと整える。体力が無尽蔵の彼らを見習いたいくらいだったが、まあ無理である。

口喧嘩をしながら影山くんが手招きするので、恐る恐る体育館へと入ろうとする。しかしそういえば私は体育館用の靴を持ってきていなかった。仕方なくタイツのままひんやりとした体育館に上がる。影山くんが見ていけと言うから、逃げられなかった。

「ん?あれ?神風さん?」
「あ、ひ、日向くん、おはよう」
「何してんの?てか何で影山と一緒に登校してんの?いじめられてる?」
「そ、そんなことないよ。お友達」

ぐるんと日向くんがこちらを振り返って言うので、私は慌てたまま彼の声に返す。突然話を振られると戸惑ってしまうのはまだ治らない。影山くんならもう慣れたのだけれど、他の人とだとてんで駄目だ。

「家が近いから、一緒に来てるの」
「こいつと?こんな早くに?大丈夫?」
「大丈夫、だよ。……影山くん、手は出しちゃ駄目だからね?」

後ろで見るからにイライラしている彼に声をかけると、本当に嫌そうな顔をしたが、私に何も言わずに荷物を下ろして上着を脱いだので、問題は無さそうだ。「分かった」の合図だった。

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時

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