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「あ」

部活が終わって、へろへろになりながら清水先輩と別れて、気づいた。影山くんと帰ると言っておきながら、集合時間も場所も指定していなかった。

本当に昨日の私を怒りたい気分になったが、もう過ぎたことなので反省だけしておいて切り替える。彼も日向くんと練習すると言っていたので、近くにはいると思う。慌てて校門を出たが、杞憂だったらしい。

「神風」
「わっ、影山くん」

校門の前に彼は立っていた。少し息を切らしていて、走らせてしまったかもしれないと少し不安になった。ただ彼はなんともないような顔をしてこちらを見るので、私も何も気づかなかった振りをしておいた。

「わざわざありがとう。ごめんね、場所とか時間、伝え忘れていて」
「いや、いい。……何してたんだ、お前」

そういえば彼には待っている間、何をしているかは言っていなかった。そもそもバレー部に入部することを決めたのも今日だったし、勉強をしていたと思っているのかも。

「ああ、バレー部のマネージャーさんの、お手伝い」
「はあ!?」

彼はびっくりしてこちらを勢いよく振り返った。その勢いに若干驚きつつも、大方予想通りの反応だったので笑ってしまう。
彼との付き合いは一年半くらいだし、彼も私のことをそこそこ知ってくれている。だからこそ予想外だったのだろう。

「お前が!?そんな体力ヘボなのにか!?」
「その通りなのだけど、傷つくからあまり言わないで」

勿論彼のこれは悪口ではなくて、単純に私のことを心配してのことである。私はそれをよく知っていた。彼は不器用だけど、間違いなく優しいのだ。

「ちょっと……馬鹿なこと、してみたくて」

私のその言葉に、彼はぽかんと口を開けてから、「あっそ」と前を向き直った。私はそれに「うん」と頷いて後ろに続く。すぐにその足は並んだ。

「……お前が」
「うん」
「馬鹿なこと、わざわざすんのは何でだ」
「それは、貴方が言ったんでしょう」

私は少しだけ胸を張った。

「勉強よりも、楽しいことがあるかもしれないから。それを見つける為に、勇気を出す為に、私はここに来たんだよ」

それは私が貴方に教わったこと。それが私を白鳥沢から引き離した理由。
そして、私を「予想外の世界」へと連れ込んだ、魅力的な言葉。

「私、それも知ってみたいの。私が知らない何かを嫌うことは、影山くんも知ってるでしょう」

私は彼に微笑んだ。彼は私を見下ろして、少し楽しそうに口角を上げた。

「そうかよ」
「うん、そう」

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作者名:ReG | 作成日時:2022年1月26日 4時

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