【HQ】学びよ、力となれ【影山飛雄】 (ページ35)

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冬休みが明けて、新年早々学校に来るのが嫌だという顔を皆でしている中、影山くんだけは普通にしていた。新年は部活が休みだったの？と聞くと、むすっとして頷いていた。中学生の部活などそんなものだよ、と思ったが、あまりにも彼が不満そうだったので口を結んだ。

彼のバレーに対する想いは全く変わっていなかった。日を追うごとに出来ることが増えるのが嬉しいのか、何かあっては私に報告しにきた。犬みたいだな、と思ったが、口にはしない。

そんな彼との生活だったが、変化がひとつある。私が影山くんを完全に怖がらなくなったことだ。案外彼は話すと正直な人だということが分かるし、顔を顰めたりするのを、照れたり嬉しがった時にもすると分かってからは、何も驚く要素はなくなった。

だからか、彼と会話をする時に噛んだりどもったりすることが無くなってきた。勿論完全にとは言わないが、初期から見れば一目瞭然だ。他の生徒とはまだきちんと会話が出来ないので、慣れというものは凄いな、と感心した。

そしてもう一つ、変わったことにカウントしていいものか悩むものがある。

「神風さんってさあ、影山くんと付き合ってるの？」

この質問だ。クラスメイトとさえあまり話さない私がよく影山くんと話しているのを見ていた女の子達が、これはいいスクープだと言わんばかりに私を質問攻めするのだ。
勿論付き合ってなどいない。私の返事はいつもそればかりだが、思春期の彼女らはきゃあきゃあと騒ぎ立てる。

中学二年ともなると、人の恋愛ごとに多少なりとも興味を持つものだ。それは仕方ないので諦めているが、私と影山くんが会話をするだけで「またあの二人だよ」とこそこそ言うのはやめてほしかった。いくら私でも羞恥心はある。

「神風、絡まれるのが嫌なら、俺と付き合うのは？」

喜多方くんのこのおふざけにも慣れたものだ。フラれてからは声をかけてこないと思っていたが、「神風から絡むなとは言われていないから」と彼は笑った。
ただきちんと割り切れているのが彼のいいところだった。私に対するボディタッチはひとつも無いし、一線を引いてくれていた。

影山くんは彼がいる時だけ不機嫌になる。喜多方くんは悪い人ではないよ、と教えても不機嫌顔のままで戻らない。大概そういう時はお弁当を分けてあげると治る。

そんなことをしながら、春休み前のテストを乗り切った私達は、晴れて三年生になった。